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リードタイムの中身は、バリューだけが理想です。

先日、レクサスの販売店の方とお話しする機会がありました。

話題の中心は、今世界的に問題となっている製品の納期のことでした。


数日前に、メーカーから来年1年間に、この販売店の営業所に割り当てられるレクサスの台数の内示があったそうです。

国内企画部から提示された数字のことだと思いますが、


それがなんと、50台に届かない数字でした。



原因はウクライナに端を発した、アメリカのバイデン政権による経済制裁の影響です。

ドイツ、ガス高騰抑制へ総合対策 最大28兆円規模に

「ショルツ首相とリントナー財務相、ハベック経済・気候相が29日、共同記者会見で表明した。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安で天然ガスなどのエネルギー価格が高騰しており、暖房需要が高まる今冬のインフレ対策が焦点になっていた。比較サイトのベリボックスによると、家庭用のガス単価は1年前と比べて3倍以上に跳ね上がっている。」日本経済新聞 2022年9月30日


これは、9月末の日経新聞の記事です。ドイツの窮乏に関する記事なのですが、どうもロシアに対して発した制裁措置が、ドイツをはじめとしたEUや、イギリスなどのいわゆる西側の味方の国を痛めつけているようです。


日本でも、大きな財政赤字を抱えているにもかかわらず、ガソリン価格に補助金を出して価格を支えています。


半導体の供給が間に合わないことが大きな原因となって、レクサスだけではなく、車を始めとした工業製品の納期が軒並み長くなっています。


どこかの誰かが、(と言っても相当な資金力を持った勢力にしかできませんが、)買い占めている?という噂も耳にします。


このブログは、政治問題を扱うことが目的ではありませんので、これ以上の深入りは避けたいと思います。


しかし、この問題をなぜなぜ分析してみると、

真因は、隠然とした、国家の力を超えたグローバルな力の存在に

辿り着くことだけは間違いありません。



 

リードタイムは、物を作り始めてからお客様の元に製品が届く期間のことを言います。


製造業では、材料を仕入れて、加工してお客様の手元に届けるという流れになっているわけです。


車の製造工程で見てみます。鉄板が一瞬にして自動車に変わるということはありません。

  1. 鉄鋼メーカーからは、コイルの形で鉄板が納入されてきます。

  2. 鉄のコイル材を、プレスして床や屋根などの、ボディーの構成部品を作ります。

  3. ボディーの構成部品を溶接して、鉄のボディーの形となります。

  4. 鉄のボディーは、塗装工程に搬入されて、色が塗られます。

  5. 色のついたボイディが、組み立て工程に搬入されて、タイヤやハンドルなど、たくさんの部品が組み付けられていきます。


この流れを頭の中で想像してみてください。

コイル状の鉄板が、順々に色や形を変えて、自動車が出来上がります。

この色や形が変わる瞬間・瞬間があって、最後に自動車が出来上がります。


お客様は、そこに価値を見出すからこの自動車の購入を決断するということです。

もちろん、価値は色や外見を重視されるかもしれませんし、エンジンの燃費を重視されるかもしれません。


もう一度製造工程の1⇨2⇨3⇨4⇨5の流れを想像してみてください。

矢印⇨ ⇨ ⇨ ⇨のところで、形が変化しています。


お客様は、統合された自動車としての価値を評価されるわけですが、

製造工程では、鉄板から始まって、塗料や部品などを一つ一つ付加して自動車にしていくわけです。


鉄板から自動車になる過程をリードタイムと言います。

リードタイムの中身は、⇨ ⇨ ⇨ ⇨、つまり付加価値なのです。


付加価値⇨ ⇨ ⇨ ⇨ は、よくみてみると、ほんの一瞬の出来事です。


たとえば溶接では、鉄板と鉄板がくっつく一瞬の出来事です。

溶接機を手に持って、溶接ポイントに近づけていく作業は、物理的に必要ですが、鉄板に何の作用もしていません。


厳密には、「リードタイムの中身は、付加価値⇨ ⇨ ⇨ ⇨であるべきです。


これをバリューチェーンという言葉で表現することもあります。


ばらばらに存在するものを統合して、新たな全体を創り出すこと(=ゲシュタルト)。

つまり、付加価値を生み出すことが製造業です。


現実はどうでしょう。

リードタイムの中身は、付加価値だけでしょうか?


残念ながら、現実は下記のようなイメージではないでしょうか。


1⇨2⇨3⇨4⇨5 ではなく、

1☁️⇨☁️2☁️⇨☁️3☁️⇨☁️4☁️⇨☁️5


例えば、こんなことが挙げられます。(架空の事例で、実際とは違います

☁️コイルを多く買いすぎてしまい、倉庫に眠っている

☁️金型の交換に多くの時間がかかっている

☁️塗色を切り替えるために多くの時間を要している

☁️組み立て工程へ搬入するために、時間がかかっている

☁️部品が間に合わなくて、待ち時間がある


このような☁️を、トヨタ式ではムダと呼んでいます。あるいは、停滞という呼び方もあります。


リードタイムで重要なことは、

  1. お客様が希望する納期よりも短いこと

  2. 競争相手より短い時間でお客様に商品を提供できること

  3. 商品に付加価値をつける期間

  4. 潜在能力を引き出す期間

  5. リードタイムは、現在の仕事のやり方の結果

と整理することができます。


ただ、残念ながら現在の状況は、上記の概念とは違って、健全な製造業の活動が、何か大きな力によって捻じ曲げられてしまっている状況です。


製品開発のリードタイムを見てみましょう。


  1. 製品のコンセプトを構築します。

  2. 詳細に設計して、性能各部位の整合関係を確認します。

  3. 詳細設計したものを試作して性能各部位の整合関係を確認します。

  4. 確認結果からのフィードバックを受けて、再設計します。

  5. 組み立て図を作成して、製造用にバトンタッチします。


ここにも製造段階と同じように☁️があります。(架空の事例で、実際とは違います)

1☁️⇨☁️2☁️⇨☁️3☁️⇨☁️4☁️⇨☁️5


☁️コンセプト構築段階で検討が不十分(後になってやり直しが発生)

☁️設計担当者のうっかりミスや、DRが不十分

☁️試作部品が間に合わなくて、試作日程が遅れる

☁️前のプロジェクトで指摘を受けたことをまた指摘された

☁️組み立て図に記載すべきことを漏らして、製造から問い合わせを受けた


ここも同じですね。


自分がお客様として、ある製品を購入しようと思ったら、誰でも☁️の詰まった製品は欲しくないものです。


製品開発の場合は、設計者の脳の中で、ものごとが進められます。

いわば、情報空間での出来事なのです。


それだけに製造と違って、目に見えないものをいかに見える化して、問題を把握するかがポイントです。


製造でも開発でも共通するのは、標準化になると思います。

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