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いっときの失敗を将来の成功の糧とする


製造段階で絶えず行われている原価低減活動は「ムダ取り」という言葉で知られています。


マスコミではトヨタのカイゼン。提案制度などによる原価低減の成果を「お家芸」などと持て囃してくれます。


実はこれが利益に効いてくる度合いからすると、努力の割に成果はそれほど多くはありません。原価の大半は、製品開発の段階で決まってしまうからなのです。


日頃努力されている製造関係の人からは、反論はあるかもしれません。しかし、生産開始時点では、目標利益を織り込んだ原価が、すでに図面の中に織り込まれているのです。

開発段階での原価低減は本当に効果的な活動です。これを原価企画といいます。

原価企画のイメージ



製造部門の節約で浮いたお金は図面に織り込まれた利益に上乗せされる形で、期間損益に計上されています。

決算関係の新聞報道などでは、その両方を合計した金額を見て、「お家芸」と報道しています。


原価企画がなぜ儲かる仕組みなのかということをご説明します。


「想定売価」は、まさにお客様購入していただける値段です。

たくさんのお客様が「この商品ならこれだけ払っても良いかな。」という感覚から相場価格が形成されます。お金持ちのお客様でしたら、いくらでも資金は出てくるともいますが、そこが不特定多数のお客様とお相手させていただける企業・製品の強みでもあります。


そこから企業を継続していくために必要な「利益」を差し引いて算出した金額が、「目標原価」です。


製品開発の終了段階で、図面に書かれている部品をの価格を集計したときに、「目標原価」以下になっていれば、必ず計画した利益が実現する仕組みなのです。だから儲かる仕組みなのです。


意外と単純な仕組みなのですが、言うは易し行うは難し、と言うことになります。

これを実現するためには、関係者の活動がうまく効率的にシンクロナイズすることが必要条件となります。


上の図では、製品1台当りの原価で表現していますので、目標原価の算出には前提となる台数があります。


たとえば、月3,000台を前提台数とすると、この製品を作るために導入する設備専用投資金額は、3,000台で割り算をして、1台当たりの原価を算出します。


逆の見方をしますと、3,000台で回収することができると言うことになります。3,000台が売れた時点で、設備投資額が回収できるため、3,001台目からは設備投資に相当するコストの分も利益に回ることになります。


新製品の開発にあたっては、構造自体から変更することができますので、原価低減のアイデアはゼロベースで考えることができます。活動はダイナミックになり、新規のアイデアが次々と提案されていきます。


中には、製品開発が終わってみて初めて、原価が高すぎるということに気づき、生産を開始してから「原価低減プロジェクト発足!」などと号令をかけている会社があります。


もうすでに手遅れと言わざるを得ません。


多くの会社では、品質不良、加工不良、欠品などにより足を引っ張られます。その点、TPSをいち早く取り入れてLEANという活動に加わっている欧米の多くの会社では、製造が足を引っ張る世界からはすでに抜け出すことに成功しています。


日本ではまだまだ多くの会社がこの泥沼の世界で喘いでいるようです。苦しみを実感しているならまだしも、「こういうものだ。会社では色々なことがおこるのだ。」などと変に納得してしまって、自らの置かれた泥沼状態を肯定さえしている会社も珍しくありません。茹でガエル状態という表現がピッタリ当てはまります。


原価企画活動を成功させるには、いくつかの条件があります。

  • 製品の個別原価が算出されていること、つまり管理会計ができている。

  • 個々の部品の原価情報や工法による原価差などの情報が設計者に提供される。

  • お客様の相場観(売価の決定)に関する情報。

  • 販売まで考えて製品のコンセプトを組み立てることができる開発(プロジェクト)リーダーの存在。

  • 企画段階でコンセプトの成立性がほぼ見込みのある状態になっている。

  • 設計者の努力による低減アイデアを部品の購入価格に織り込むことができる交渉力。

  • 製品開発のプロセスが確立できていて、関係者の活動の連携が見えるようになっている。

  • 課題にぶち当たったときに課題を確実に解決する力。


などなど、まだまだありますが、基本的なところはこのくらいです。

実際に初めての組織に原価企画をインストールしてみると、上記の項目ができていない弱点がたくさん見えてきます。


最近の例では、壁にぶちあたった時に、課題解決が間に合わず、生産開始時期を繰延してしまうという事例がありました。納期を守ることが出来ないことが論外なのですが、それでも彼らはその問題に気づくことが出来ません。


もちろん担当者や製品開発リーダーの一存で、繰延を決めたわけではありません。きちんとトップに報告して承認を得ています。


これで安心してしまってはいけません。これを自らの失敗/問題として認識して、次に繰り返さないという考え方にならないと、これからも延期の癖はこの会社の風土としてつきまといます。悪習です。


今回起こったことを問題として、原因をしっかりと追求して次は同じ失敗を繰り返さないという姿勢が重要です。


失敗を問題として捉えることができるか?

問題の原因を見つけることができるか?


これが出来なければ、いつまでも同じです。将来の糧とすることはできません。

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