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「カイゼンの力」をタイムリーに生かして、生産性3倍増を達成!③

EVのインフラ関連の製品を設計・生産するEVシステム部(仮称)のお話の続きです。


「現有勢力で、生産能力を3倍」を目指すには、課題は3つ。

カスタマイズ設計(開発)のリソース、400時間不足

所要:2000時間/年に対し、保有:1600時間/年=ー400時間/年


新規アウトソース生産工場の円滑な立ち上げ


生産計画のリソース、800時間不足

所要:4000時間/年に対し、保有:3200時間/年=ー800時間/年


1〜3の課題を目の当たりにしてみると、これまで自分たちはカイゼンを勉強・実践してきたという経験と自信がありますので、「この課題なら、なんとか乗り越えられる」という感覚が湧いてきました。


 

 

課題aのカイゼン活動:

「カスタマイズ設計(開発)のリソース、400時間不足」


お客様からのカスタマイズ要求に対して、この製品は設計者1名で対応していました。



どこの会社でもよくある話ですが、技術的な課題や疑問は全て設計者に質問は集中します。


高度な技術情報に関する質問をはじめ、カタログやマニュアル類に書いてあるような内容まで、よろず相談係になっている設計者をよく見かけます。


設計者は、製品に関する情報については社内でも最も詳しい存在であるため、関係者は何か困ったことがあると、すぐに問い合わせをしてしまう傾向にあります。


また、設計者もそれが自分の仕事だと思い込んでしまっているため、何の抵抗もなくそれらの相談に丁寧に回答しています。


設計者が丁寧に対応してくれるため、また相談しようとなって、質問対応が設計者の業務の中核を占めてしまっていることも、よく見かけます。






設計者の脳の中に蓄積されているこのような知見・情報を

”浪費”してしまって良いのでしょうか?


設計者の知見・情報をもっと活用して、付加価値の高い仕事にシフトするべきではないでしょうか。


商品の魅力を上げるための、機能面での改良とか、コスト低減などに、もっと設計者の頭を使うべきです。


 

設計業務は、情報空間の仕事です。抽象度を上げてみれば、情報空間でもカイゼンの手順は、同じです。


物理空間でもカイゼンのはじめは、現状分析からです。


設計者の工数実績を集計して分析すると、1製番当たり平均2時間15分かかっていることがわかりました。


さらに内容内容別に層別して見ると、ドキュメント類の作成、や出図処理作業(必要なデータの入力)仕様書のチェック・・などに分けられました。


この層別結果を眺めてみると、「この仕事、なんで設計者がやっているの?」と思われる仕事が大半を占めていました。


今までは、当たり前のように設計者に頼っていたことに問題意識を感じ始めてきたのです。


読者の皆さんの中には、こんなこと当たり前じゃないか?と思われる方のいらっしゃるかもしれませんが、コンフォートゾーンに安住してしまうと、スコトーマ(心理的盲点)ができてしまうのです。


設計者の現状の仕事の中には、他の人にシフトできる仕事、ITに置き換えられる仕事があることに気がつきました。


もう一つ、設計の仕事にも関わらず、作図していなかったこともわかりました。


工数実績のデータを層別して、パレート図を作成しただけで上記の事実が見えてきました。


 


層別をきちんとすることができれば、パレート図でなくても、円グラフや帯グラフでも全体の構成はビジュアル化できます。


層別の区分を変えてみると違った世界も見えてきます。


データを層別するという行為は、分析の初歩で非常に単純なやり方ですが、

ものすごい威力を発揮します。


頭の中で想像していたことがビジュアル化されることもありますし、想像以上の事実を発見することもあります。


層別はQCの基本ですが、難しい分析に時間をかけるなら、是非層別をやってみてください。



 



層別した項目を、他の人にシフトできるかどうか検討していると、

設計者が営業から回ってきた仕様書を全てチェックして、修正している時間が平均15分あることがわかってきました。


「これは、設計者の知見がないとできない仕事だな。」というのが最初の判断でした。


「実際にどういう指摘をしているの?」と設計者に聞いてみると、


「ほぼ間違い探しですよ。」という返事が返ってきました。


 


TPSの視点で見ると、チェックや検査はものに変化を与えない業務です。


ただ見ているだけですので、生産現場ではワークに何も変化を与えない状態です。


ビスやボルト1本でも取り付けば、ものに変化があり、完成品に近づきます。


しかし、間違い探しでは、情報に全く変化が起きていません。


これと同じくチェックや検査は、設計=情報空間の世界でも、情報に変化がない状態です。


ものと情報の違いはあっても抽象度を上げて考えれば、同じなのです。

 


営業の作成した仕様書を受領して、内容をチェックして修正箇所を指摘して送り返す。


これは情報に変化を与えていないどころか、やり直しでした。


私はこの分析結果の説明を聞いて、仕様書のミス以外は、設計者の知見を必要としないとしたら、全自動のIT化ができるのではないかという直感を持ちました。


2時間15分の間に設計者は新たな図面を作図していませんでした。


普通に考えれば、設計者とは構想の時間も含めて、検討+作図の時間が付加価値をつける時間なのですが、2時間15分の間に、その時間は記録されていませんでした。


記入漏れではありません。

この整番は標準タイプなので、新たな図面を作成する必要がなかったのです。


特注タイプの場合、2時間15分+特注設計や特注部品手配などとなりますが、ここは新たな付加価値の部分です。


「標準整番がどれくらいの比率で受注されるのか?」を調べてみると、昨年の実績で、70%が標準品(オプションやチョイスなどを含む)でした。ざっと計算しただけでも、400時間はこれで湧いてくることになります。

(2時間15分✖️400台✖️70%>400時間)


この改善活動は、下記2項目に絞られ、関係者で共通しました。

仕様書のミスをゼロにする

「標準タイプの設計者レス」= 標準設計に関する設計者業務のITによる自働化

(続く)


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