これから新製品開発を始める皆さんへ、
すでに現状お客様に提供している製品を、他社より少し競争力を高めるために、コストダウンを図ることを、仮にマイナーチェンジと呼びます。
現状の製品を根底からひっくり返して、今までにない、他社を圧倒的に凌駕するような、新たな製品を創造する。
これはまさにイノベーションと呼ぶにふさわしいでしょう。
エンジニアだったら、後者のイノベーションにチャレンジしませんか!
人間の脳は、自分にとって関係がないと思っていることは、脳幹にあるRAS(網様体賦活系)のフィルターが遮断し、情報を情報として受け取らないようにできています。
つまり、RASの働きによって、あなたは自分にとって関係あると思っている情報しか受け取ることができなくなっているのです。これが通常のあなたの状態です。
人間の認識には、「見ているようでいて、実は見ていない」という現状が起こります。
あなたもそのような自分に気がついたことがあるのではないでしょうか?
それをスコトーマ(心理的盲点)と言います。
自分で思いついた、どうしても解決したいテーマに取り込む場合は別です。放っておいても、体がむずむずしてきて、気がついたら課題が解決しています。
しかし、カイゼンテーマを与えられたときに、「別に、今のままでも困ってないけどな。」と思うような場合、上記の「見ているようでいて、実は見ていない」と言う状況になっています。
RASの働きによって、あなたは自分にとって関係あると思っている情報しか受け取ることができなくなっています。
脳の情報制御機能(RAS)と言うのは、人の脳の活性化ネットワークのことで、そのときに重要であると思った部分だけを通す、フィルターのようなものだと理解してください。
なぜ私たちにスコトーマがあるかといえば、それはRASがあるからなのです。私たちの脳がRASによるフィルターを通して、目の前の現状を見ている限り、そこにはスコトーマがあり、現実世界をそのまま認識している人は一人もいないのです。
つまり、人はそれぞれスコトーマとRASを持ち、その結果として自分のわかっている都合の良い世界だけを見ているのです。
イノベーションを起こさないと出来上がらないような、新しい技術に基づいた製品を開発すると言うことは、現状レベルの世界にいたのでは、達成できません。
現状の殻を破って、現状の外に出ていかなければんりません。
現状の殻というのは、先ほど述べたスコトーマに覆われた世界です。
イノベーションを成功させるには、現状の外に飛び出さなくては、何も起こりません。
何も変化は起こらないのです。
新しい技術による製品は、今のあなたの目には見えていません。
でも、あなたのイメージは、今よりずーっと高いところに、その存在をイメージとして、感じることができるはずです。
そのイメージをどんどん膨らませていきましょう。
そうすることによって、あなたのRASは消えていきます。ぶ厚いフィルターが、外れていきます。
そうなると、「新技術による新製品」を創造するために必要な情報が、自然とあなたの脳へ入ってきます。
必要な情報は、あなたの周りにあるのです。
それに気がつくかどうかだけなのです。RASがそれを見えなくしているのです。
Applenの生みの親、スティーブ・ジョブズもこの方法で、MACを生み出しました。
もともとはカリグラフィーの知識と、マッキントッシュの開発とはまったく関係がなかったのです。
それを見事に統合し、パーソナルコンピュータの画期的な進化を実現したのがジョブズです。
この情報を統合する能力をゲシュタルトと言います。
一見関係無いような点と点を一つ上の視点で統合し、新しい価値を創る。それがジョブズの言うconnecting the dotsです。
出来るだけ遠い点同士を結びつけることで、よりダイナミックなゲシュタルトを創ることができます。
事務所の机の前に座っていても、ゲシュタルトはできません。スコトーマを厚くするだけかもしれません。
外に出て、たとえば、ビルの屋上から下界を眺めるように、上からの視点で見ることで、必然的に抽象度が上がります。
一瞬にしてスコトーマが外れ、そこに壮大な絵が浮かび上がるからです。それがジョブズの場合は、アートとテクノロジーが融合したパーソナルコンピューターの誕生でした。
ばらばらに存在するものを統合して、新たな価値を生み出す能力=ゲシュタルト能力です。
あなた方は、 ある製品に関しての技術的なプロフェッショナルです。今までの活動で、このゲシュタルト能力の基本的な訓練を受けていると思います。
最初は、断片的に脳に蓄積していった知識があなたの中で、一つの整合的な体系になっていると思います。
現代社会に流通している情報量はすさまじい勢いで増加しています。
事務所の中の情報は、限られているかも知れません。
しかし、世の中の膨大な情報をうまく整理・運用して新たなゲシュタルトが構築できれば、画期的な価値創造が可能になるでしょう。
あなたは、一人ではありません。
あなたの創造する製品でつながっている、頼りになる仲間がいます。
「新技術による新製品」開発をやり遂げることを、その仲間でゴールとして共有することで、皆の気持ちが一つにまとまります。
気がつくと、人一人に自信が湧いてきます。
これをコレクティブ・エフィカシーと言います。
コレクティブは、集合とか、集団。
エフィカシーは、ゴールを達成する自分の能力の自己評価
皆さんのグループ位メンバーの間に、自信が湧いてきます。
一人では、できないことも、コレクティブ・エフィカシーが上がってくれば、なんでも解決できてしまいます。
私は、皆さんの気休めのために、これを伝えているわけではありません。
上記述べてきたことは、認知科学の理論で、学術的に説明ができます。
あなたたちの身近な組織でも、すでに、ゴールを設定した途端、しばし検討している間に、不満のような気持ちを感じることがあるかも知れません。
しかし、皆の力を信じ、コレクティブ・エフィカシーが上がれば、ゴールは見えてきます。
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