fMRI検査によって、植物状態と見られていた患者の意識が見えた

「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。

「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。


この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ

「意識のしるし」を書いていきます。


無意識に関する記事(41件の目次)は、ここです。

意識に関する記事(12件)は、ここです。

 

前回のブログでも触れました。2006年、スタニスラス・ドゥアンヌたちの研究チームは、コミュニケーション能力を失った患者を、昏睡、植物、最小意識、閉じ込めの各状態に分類する方法が確立できたとかんがえていました。


しかし、著名な科学雑誌『サイエンス』に、衝撃的な論文が掲載されました。


2006年、著名な科学雑誌『サイエンス』に掲載された、イギリスの神経科学者エイドリアン・オーウェンの論文は、植物状態のあらゆる臨床的徴候を示しながら、意識がかなり残存することを示す脳の活動が見られる患者の例を報告していました。


この報告は、通常の閉じ込め症候群患者よりもさらに悪い状況に置かれた患者、すなわち意識がありながら、まばたきすらできず、その事実を伝えるいかなる手段も持たない患者がいることを示唆しています。


しかし技術の発展によって、脳画像法は、このような患者の意識の状態を検知し、患者と外界の結びつきを再確立することができるような、きわめて高精度なものになっているのです。


オーウェンらが研究の対象にした患者は、交通事故に遭遇し、前頭葉の両側を損傷した23歳の女性でした。

事故にあってから5か月が経過しても、彼女は、睡眠・覚醒サイクルは維持しながらまったく無反応のままでした。


この状況は植物状態の定義そのものです。熟練したメンバーから構成される臨床チームの誰もが、気づき、コミュニケーション能力、自発的コントロールの徴候をまったく見出せませんでした。

彼女は、一連のfMRI検査を受けていました。そして彼女に文章を聞かせたとき、皮質の言語ネットワークが全面的に活性化するのが観察されたのです。


聴覚と音声理解を司る神経回路を含む上側頭回と中側頭回が、強く発火したのです。

また、あいまいな単語を加えて文をわかりにくくすると、左下前頭皮質(ブローカ野)に強い活性化が見られました。


これらのような皮質の活動の増加は、彼女の音声認識が言葉の分析や文の統合の段階に達していることを示唆しています。


この患者が言われたことを理解しているか否かを確かめるため、オーウェンはさらに、

「テニスをしているところを思い浮かべてください」

「自宅の室内を巡回しているところを思い浮かべてください」

「リラックスして何もしないでください」など、

特定の行動を開始または中止させる複雑な指示を含む文を正確なタイミングで聞かせ、新たな脳スキャンテストを続けました。


こうして、「テニス」「巡 回」などの言葉によって生き生きとした想像的活動が喚起される30秒ほどの期間と、「リラックス」という言葉をきっかけとする30秒程度の休息期間が交互するようにしてテストしました。


ものを言わず身動きもしない患者がこれらの指示を理解しているのか否かは、fMRIスキャナーがなければオーウェンらには知りようがありませんでした。


しかし、彼女の脳の活動は、実験者の言葉による指示を密接に追っていたのです。テニスをしているところを想像するよう彼女に指示すると、その要求に正確に従って、補足運動野が30秒ごとにオンになったりオフになったりしました。


また、部屋を巡回しているところを想像するよう指示すると、海馬傍回、後部頭頂葉、前運動皮質など、空間表象を司る脳領域を含む脳のネットワークが活性化しました。

これらは健常者が同じ想像課題を遂行したときに活性化する脳領域とまったく同じでした。


私には、これらの証拠が十分に彼女の意識のある状態を示していると思いますが、次のような反論があったようです。


「おそらくこれらの領域は、本人が指示を意識して理解しなくても、まったく無意識のうちに活性化するのではないだろうか」

「テニスという名詞を聞くだけで、運動野が活性化するのに十分ではないのか。」


また、「巡回という言葉を聞くだけで、空間の感覚が喚起されるのではないだろうか。」

つまり、脳の活動は、意識がなくても自動的に生じるかもしれないという反論でした。


オーウェンは、この反論をくつがえすために、さらに実験を続けました。


健常者をスキャナーに寝かせ、二つの単語「テニス」「巡回」を聞かせました。

この対照実験では、これらの単語を聞いたときに何をすべきかを被験者に指示していません


二つの単語によって喚起された脳の活動は、互いに相違が見られませんでした。何も指示されていないこれら被験者の脳の活動パターンは、患者や健常者に想像課題を与えたケースで活性化されたネットワークの活動パターンとは異なっていました。


(23歳の女性患者には、特定の行動を開始または中止させる複雑な指示を含む文を  正確なタイミングで聞かせ、新たな脳スキャンテストを・・・・)



この対照実験とは違ってオーウェンの23歳の女性患者は、課題に合ったあり方で前運動野、頭頂葉、海馬領域を活性化させ、単に特定の単語に無意識に反応する以上のことをしたのですから、彼女は、課題について考えているように思われます。


オーウェンらが指摘するように、患者が言葉をきっかけとして、要求された心的課題を実行していない限り、ただ一つの単語を聞いただけで、まるまる30秒にわたり脳の活動が引き起こされるとは考えにくいものです。


グローバル・ニューロナル・ネットワークモデルも実験から得られた知見に当てはめてみると、単語が無意識の活動しか喚起しないのなら、その活動は、せいぜい数秒続いたあとで急速に消失し、もとの基準レベルに戻るはずです。


それに対し、前頭前野と頭頂葉の特定の領域に30秒間持続する活動が観察されれば、その事実は、ワーキングメモリにおける意識的思考の存在をほぼ確実に裏づけてます。


患者にも想像課題の実行はたやすいが、それによって起される脳の活動が意識の働きなしに生じ得るとは考えられません。


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