今回は日本語版のみの配信になります。
日本の半導体産業が復興できるのではないか?
それも今までの業界全体のスコトーマ(盲点)を大きく破壊する方法で!・・というお話です。
半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、「3ナノ」品と呼ばれる、現段階で世界最先端となる半導体の米国生産に初めて乗り出すことになリました。
('22/12/7 TSMC、米と連携 一段と 中国対抗、米の悲願に対応 台湾生産集中に風穴 :日本経済新聞)
1950年代の繊維製品、60年代の鉄鋼、70年代カラーテレビ、自動車、そして80年代の半導体・・こう書いてみると、日本の産業はアメリカによっていろいろな面で力を削がれてきた歴史があります。
逆に朝鮮特需では、力をつけてもらったではないか?と言われるかもしれませんが、そもそも先の大戦によって国全体の力が削がれてしまったということも私は忘れません。
(この話はこの辺にしておきます。)
80年代の半導体摩擦の結果、当時世界を凌駕していた日本の半導体は、大きく力を削がれてしまいました。
アメリカのせいだけではなかったことを、私は6月のブログでもお届けしていますので、参考にしていただけたら幸いです。
そもそも日常管理ができていなかったというお話でした。(下のタイトルをクリックしてください)
「少なくとも、「無為徒食」と言われない、実行するマネジャーになりましょう。」('22/6/19)
半導体のシリコンウェハ(以下、ウェハ)の加工工程は、多いもので600工程以上もあるそうです。
「600工程もあるんだったら、さぞ時間がかかるんだろう」というイメージをお持ちになることは自然なことです。
でもでも、本当にそうなの?
半導体が入手困難な今、
「半導体はまとめて作らなけりゃならないから・・」
「どうしても半導体の生産にはリードタイムがかかるから・・」
という言い訳が飛び交っているのではないでしょうか?
私も昔から、このような言葉をよく耳にしてきました。
私がこの言葉を記憶しているのは、この言葉を聞くたびに私の無意識が、「違和感を感じる!これは何かおかしいぞ!」と繰り返し意識にあげていたからなのでしょう。
私にとってこの言い訳は、「何か間違っているのではないか?」と何度も思った記憶があります。
どうも半導体の生産思想は、「ウェハを大きくし、1枚のウェハから数万個もの半導体チップをつくり出すことで、コストダウンや生産性の向上を図ることができる」ということが基本なようです。
「まとめて作れば、1個あたりは安くなる。」という、トヨタ生産方式の真逆をいく「固定観念=スコトーマ」に縛られていることがわかりました。
今は直径300mmのウェハが主流なようですが、さらに大きなウェハで、もっと大量生産をしようという計画まであるようです。
そんなにまとめて作ってどうするの?
時代は本当にみんなで同じものを使う大量生産を求めているのでしょうか。
もうとっくの昔に、大量生産の時代は過ぎ去っているはずです。
どうも、この業界の「固定観念=スコトーマ」を打破する必要がありそうです。
さらに、半導体工場の仕事の流れを大きく見てみます。
各工程では、上流から流れてくるウエハに対して化学反応と加工を行っています。
搬送装置で、25枚入りの搬送ケースに入ってるウエハが運ばれてきます。
実際の工程では、これを1枚外に出して加工する時間が1%以下で、1枚のウエハを加工する時間は、 ほんの一瞬の出来事なのです。
トヨタ生産方式の視点で見た場合、(カイゼンは)物事に付加価値をつけるプロセス、動きだけにすることです。
部品の取りつけは、加工=付加価値をつける瞬間(=ボルトで締め付ける瞬間)と考えますので、加工時間はほんの一瞬の出来事で、それ以外は付加価値をつけない動きです。ムダ取りの対象となります。
上記の箇条書きの例で、半導体の生産工程は、99%が運搬時間だということがわかりました。
「運搬」はトヨタ生産方式でお馴染みの、7つのムダのひとつです。
加工・在庫・造りすぎ・手待ち・動作・運搬・不良手直しが7つのムダの一つです。
物事に付加価値をつけない、単なる動きなのです。はたらきとは言えません。
そもそもウエハを25枚入りのケースに入れて運んでいるわけですから、1枚のウエハの加工に当てられる時間は、1÷25=4% となります。残りの24枚は手待ちになっているのです。
ウエハ1枚は、工程ごとに96%の時間をケースの中で、ただひたすら待っているだけです。
現状の半導体製造の「まとめ造り」の「固定観念=スコトーマ」は、半導体工場を巨大化する結果を招いてしまい、小回りの効かないハードに押しつぶされてしまっています。
現在の半導体の製造工程は多いもので600以上あるそうです。
日経新聞によりますと、4ナノ品の工場建設の場合、投資は1兆円以上、3ナノ品では2兆円を超える巨額投資が必要というのが今の半導体業界の相場だそうです。
「まとめ造り」の「固定観念=スコトーマ」でしか物事をみることができなくなってしまっているために、下記の脳内イメージから、一歩も外に出ることができなくなってしまっています。
工程のひとつひとつに幅が2mある製造装置が必要
工場内は空気がキレイなクリーンルームが必要
この条件を満たすには巨大工場(メガファブ)が必要
工場が巨大化すると、関わる人が多く必要
すぐに工場を建てることもできまない
これだから「半導体は急に生産量が増やせない」というコンフォートゾーンの中に業界全体でどっぷり浸かっています。
そんな中で私は、YouTubeで一つの明るいニュースを見つけました。
ものづくり太郎さんの動画です。彼の動画は非常にわかりやすくてしかも見ていて楽しいものばかりです。
一年前(2021/12/04)に公開されたミニマルファブを紹介した動画です。
すでに41万回も再生されています。
上記の半導体の生産工程の実態などについての情報は、この動画から拝借いたしました。
ものづくり太郎さんのわかりやすい解説は、非常に勉強になります。
下記は最近(2022/11/18)に公開された動画ですが、2週間で12万回も再生されています。
詳しい内容は、動画をご覧ください。
このミニマルファブというコンセプトは、現在世界の半導体業界をリードする勢力には、先ほども述べたように、コンフォートゾーンにはまりこんでいて、「まとめ造り」の「固定観念=スコトーマ」が蔓延っていますので、彼らには思いつくことができないのではないかと思います。
ミニマルファブというコンセプトを10年以上も前に提案したのは、産総研です。
(産総研:国立研究開発法人産業技術総合研究所(略称:AIST)は、独立行政法人(国立研究開発法人)として設置された経済産業省所管の公的研究機関。)
産総研では、半導体が必ずしも、大量生産品を必要としておらず、多品種少量および変種変量生産のニーズが強いことに着目しました。
そこから、新しい半導体システムの姿~ミニマルファブモデルを提案しています。
工場ラインと試作ラインの投資規模を大幅にコンパクト化して行くことで、コスト競争力だけでなく、 研究開発直結型であることを高付加価値の源泉とし、一方で変種変量の潜在市場を獲得していくことを目指しています。
産総研の呼びかけに応じて、多くの企業が参画して研究開発が行われています。
まさに、現状の殻を打ち破る考え方から、新たなゲシュタルトを構築する動きはすでに実現に近づいているようです。
この新しい生産システムでは、1ラインの投資額は従来のメガファブと比べ数千分の1の、およそ5億円程度になるということです。
このシステムの特徴は、
(1)ハーフインチ径ウェハ、
(2)装置サイズ30cm幅、
(3)局所クリーン化生産システムによるクリーンルームレス、の3つです。
3つ目の局所クリーン化システムというコンセプトは、半導体に限らず、工場見学に行くとクリーンルームを紹介する会社が多いことからしても、大きなパラダイムチェンジから生まれたものです。
この「ミニマルファブ」という考え方は、製品を製造するときに、あらゆるムダを省けば、製品コストを下げ、国際的な競争力が培われ、さらに地球環境への影響も抑えることができるというもので、まさにトヨタ生産方式の目指すところと一致しています。
基本的な考え方には、普遍性があると思います。この動きが日本発の新しい半導体生産の動きだけではなく、他の業種にも広がっていくことを期待しております。
【お詫び】新価値創造展2022につきまして、オンラインで確認しま開いたが、ミニマルファブの展示が見当たりませんでしたので、報告いたします。
'22/12/14〜16日に「ミニマルファブ」の展示会が計画されています。私も少し覗いてこようかと思っています。12/1〜23までオンライン展示会も利用できるようです。
皆さんも時間があったら、いかがですか? 情報をそのまま下に貼り付けておきます。
新価値創造展2022について
中小企業が最新の製品・技術を展示することで、販路開拓に向けた出会いを創出します。
入場区分 商談/一般
利用施設 東6ホール
開催期間 2022年12月14日(水)~2022年12月16日(金)
開催時間 10:00-17:00
料金 無料
東京ビジネスチャンスEXPO事務局(株式会社東京ビッグサイト内)
TEL:03-5530-1362 FAX:03-5530-1222 Email:bizchanexpo@tokyo-bigsight.co.jp
新価値創造展2022
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