原価企画は、新製品の原価を企画するという意味で、単なる原価低減とは違います。
製品が完成した後から、原価を下げようとすると設計変更できる部分が少ないので、
目標を達成することがかなり困難になります。
後年ダイハツ移籍後に感じたことだが、ダイハツの開発では、未達のままでも、「立ち上がり後、量産原価低減活動をしますから」とお許しをもらい、そのままの日程でラインオフさせることもあった。しかし、量産になってからでは、多くの原価低減は困難で、未達のままになることが多かった。
(中略)
「製品企画の仕事=原価企画の仕事」といっても過言ではない。トヨタの特長の一つと言ってもよい。製品企画の初期から始められ、何度も達成状況をフォローされる。『トヨタ チーフエンジニアの仕事 (講談社+α新書)』(北川尚人 著)より
最近では、概算見積もりの段階で9割以上目標達成の目処が立っていないと目標達成は難しいと言われています。
上記の図は目標利益と目標原価を表しています。
これは1台あたりの売価ー原価を示していますが、10000台/月の原価企画台数だとすると、企画通り10000台製品が売れると、モデルライフ(通常4年とする)の利益は、
目標利益✖️1000x12ヶ月✖️モデルライフ(4年)
これをモデルライフの台数で見てみますと、左の図のようになります。
企画台数以上に売れた場合は、赤のハッチングにような状態になることがお分かりになると思います。
CEは先頭になってその旗を振った。「売価ー利益=原価」の公式から導き出される厳しい原価目標を各設計へ割り振る。 (講談社+α新書)』(北川尚人 著)より
何度もCEと各設計部署との間でキャッチボールを行いながら、各設計とともに目標達成に向け一緒に低減アイデアを検討していきますが、製品企画のメインとなる仕事です。
低減策ばかりでなく「こんなにも素晴らしい車なのだからもっと高くても、たくさん売れるだろう」と営業に販売価格アップや原価企画台数の上乗せの交渉を行うこともあるようです。
原価の大半は企画・設計段階と生産準備段階で決まってしまいますので、上記のイメージ図の黄色と赤のハッチングの部分はそこで決まります。
一般的な原価低減の意味する「ムダ取り」は量産段階での手法で、ここが世間では注目を浴びていますが、全体の5%に届かないくらいしかありません。
今回のお話は製造部門を敵回しかねないドラスティックなお話ですので、目立たないようにさらっと書いています。😅
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