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執筆者の写真Hatsuo Yamada

苦労して作成した標準工程表の威力は、想像をはるかに超えていた。③


ある大型機械メーカーのお話です。製造に約1ヶ月もかかる大型機械、これまで何年もカイゼン活動を続けてきても、なかなか画期的な成果は出てきませんでした。


それはなぜだったのか?


ーー認知科学コーチングで言えば、スコトーマが外れなかったからなのです。

ーーカイゼンで言えば、現状打破、思い込みが外れたからなのです。

(スコトーマ=心理的盲点)


今までは、部長、課長、班長が中心になって活動していましたが、日頃から大型機械の複雑な構造を熟知している

ユニットリーダーのマインドが、分厚く積もっていた、スコトーマを見事に払い除けました。


認知科学のコーチングとトヨタ式カイゼンによって、職場の情報空間(それぞれの作業者のマインドの集合)に大きな変革が起こりました。


連載第3弾です、

嶋崎リーダーの思いが、全員のコンフォートゾーンを理想へ押し上げました。



 



ミーティングの席上で、嶋崎は今心に浮かんだままのことを正直に主張することに決めました。


嶋崎は訥々と意見を述べ始めました。


色々考えてみたんですが、やはりこのままじゃいけないと思ったんです。



若手の作業者は、自分が指図しなければ動いてくれない。自分にもやるべき作業がたくさんある。




自分の作業をこなしながら、結構気を配っているつもりですが、手待ち状態は時々起こります。


その逆に、頼んだ作業は終わっているだろうと思って、それとなく見てみると、半分も進んでいないことがよくあるんです。


その作業者はその作業が初めてだったんですね。


言ってくれれば良いのに、私には言いにくいのかも?


誰がどこまで仕事ができるのかも、自分でわかっているつもりなんですが、やらせてみるとできなかったということがよくあります。


自分が手抜きをしたいと言うことではありませんが、作業者が自立してくれると良いとつくづく思いますね。


このままじゃ、メンバー全員が不幸な状態ですよ。


自分の考えを一言でまとめると、あるべき姿というのは、


『全員が自立して仕事ができるチームになる』

といったところでしょうか?


プロ野球でも、選手兼監督のプレイングマネジャーはいますが、結構うまくいかないことが多いようです。


でも、侍ジャパンのように、全員のレベルが高いチームは、チームを結成してすぐに良い結果を出します。


個人のスキルだけではなく、お互いの姿がよく見えていて、チームワークもよく理解していると言うことでしょう。


侍ジャパンのような高スキルの選手(人材)だけを選抜できるような世界なら、放っておいてもパフォーマンスは上がります。



経験の浅い人でも、技術を習得しながら早期に一人前に育てるにはどうしたら良いか、ということを考えなければなりません。これが課題です。



3.「標準作業の世界」の確率を目指して


この会社では、10年以上もトヨタ式カイゼンに会社全体で取り組んできました。


会社全体でリードタイム短縮の数値目標を明確にしたビジョンを目指して、各部署が期ごとのテーマを決めてTPS活動を推進しています。


この会社の社長は役員に昇格する前から、カイゼンリーダーを務め、カイゼン活動にとりわけ強い理解を示していらっしゃいます。


これまで各部署は、局所局所ではカイゼン効果をあげてはいましたが、


さらにトップの熱い思いを受けて、今年度のはじめから心機一転、管理監督者のマネジメントに焦点を当てて、取り組むことになりました。


大型機械は、この会社の主力製品です。ユニットリーダーの役割・使命のミーティングは、トップの方針を受けて組立課がモデル職場となって始めた新たな活動でした。


ユニットリーダーの嶋崎が、主張した『全員が自立して仕事ができるチームになる』


というビジョンは、ミーティングに出席していた課長や他のユニットリーダーの心の中でも同じような思いが温まっていたようです。


すぐに他のユニットリーダーからも意見が出てきて、ミーティングはいつになく盛り上がった場になりました。


やはり、組織のビジョンは組織の中に包含されているものなのです。


この場をリードしていた野田課長(仮称)は、ユニットリーダーたちの思いをうまく引き出して、『全員が自立して仕事ができるチームになる』というビジョンをその場で共有することに成功しました。



そして、『全員が自立して仕事ができるチームになる』には、


標準作業の世界を作ることだという共通認識を作り上げてしまいました。




コーチングの視点で言うと、ラポール(共感)が生まれたのです。


コーチングでは、組織がゴールを共有すると、ラポールが生まれると言う認知科学の知見を重視しています。




さらに、ゴールを共有してラポールが生まれると、

自分たちのいる世界が変わってきます。


自分たちのいる世界とは、自分たちが日頃馴染んだ世界、サッカーで言えばアウエイではなくホームです。


ホームにいるときは、人はリラックスすることができて、最高のパフォーマンスを上げることができます。


今回、『全員が自立して仕事ができるチームになる』

と言うビジョンを各ユニットリーダーが、頭に描きましたので、

彼らは頭の中でその新しい世界にホームを移します。


コーチング用語では、コンフォートゾーンが移行すると言います。

この時に発生するエンベルギーをモチベーションと言います。




彼らの頭の中では現状の忙しさに追いまくられていた世界から、『全員が自立して仕事ができるチームになる』世界に飛び移っています。



この後、ゴール達成に必要なのは、自分の無意識の中に「自分たちなら、この課題は必ず達成できる」と言うエフィカシー(課題達成の自己能力の自己評価)を高めていくことです。


ユニットリーダーの中には、「ビジョンはわかったけど標準作業の世界を創るってどうすりゃいいんだ?」と言う疑問を感じている人がいます。


そう言う人たちを含めて、組織全体がエフィカシーを上げること、絶対にこの課題は達成できると信じることが必要なのです。

(続く)

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