ある大型機械メーカーのお話です。製造に約1ヶ月もかかる大型機械、これまで何年もカイゼン活動を続けてきても、なかなか画期的な成果は出てきませんでした。
それはなぜだったのか?
ーー認知科学コーチングで言えば、スコトーマが外れなかったからなのです。
ーーカイゼンで言えば、現状打破、思い込みが外れたからなのです。
(スコトーマ=心理的盲点)
今までは、部長、課長、班長が中心になって活動していましたが、日頃から大型機械の複雑な構造を熟知している
ユニットリーダーのマインドが、分厚く積もっていた、スコトーマを見事に払い除けました。
認知科学のコーチングとトヨタ式カイゼンによって、職場の情報空間(それぞれの作業者のマインドの集合)に大きな変革が起こりました。
今回から連載していきますので、お楽しみに。
1.日常のトラブルに追いまくられて、どうにもならない毎日
嶋崎(仮名)は大型機械KZ1000XAKZの組み立て工程で、ユニットリーダーというリーダーの役割を担っています。
ユニットリーダーとは、班長の下位の職制で、4人/ひと組のユニットのリーダーに当たります。
ユニットの中で、経験も一番長く、技能面でも自分がトップであることは自他ともに認めるところです。
数年前から、若い頃から面倒を見てくれた自分より先輩の人たちが、次々に定年退職で職場を去り、今では年齢順で、自分が班長の次になっていました。
自分の後輩でもあり、部下でもあるメンバーが、毎日仕事に追われまくって暗い顔をしているのを見ると自分にも責任の一端があることを時々思うことはありました。
受注台数が多くなって仕事の負荷が高くなってくると、部品の欠品や過去の不具合のフォローをする必要があるため、ますます忙しくなります。
また、納入済みの機械の修理やメンテナンスのために、人を出さなければならないことが重なると、自分も含めて国内だけでなく、海外へも人を派遣しなければなりません。
社外での仕事が務まる人は経験も豊富で、スキルを持った人材が引っ張りだこです。
反面、工場に残る人は比較的経験の浅い人材になってしまう傾向にあります。高負荷、人材不足、工程内トラブルのトリプルパンチです。
それでもお客様にお約束した納期は死守しなければなりませんので、なんとか辻褄を合わせているという現状なのです。
嶋崎は、長い経験の中で仕事がない時期、低負荷の時期も経験しています。
あの心細い思いよりは、高負荷の苦労の方が良いとは思いますが、日頃から仕事に追いまくられる現状はなんとかしなければならないと思っていました。
そんな中、全社で10年以上継続しているカイゼン活動の今年度のテーマの一つとして、「大型機械KZ1000XAKZの組み立て工程の生産性向上」活動が取り上げられました。
「ユニットリーダーの意識向上活動」も合わせて推進していくことになりました。
2.ユニットリーダーとして、チームとしてのあるべき姿とは
今年度から会社の方針で、「大型機械KZ1000XAKZの組み立て工程の生産性向上」と並行して「ユニットリーダーの意識改革活動」を推進する事になりました。
嶋崎は、この高負荷の時期にどうしてこんな活動をしねければならないのか、という気持ちも半分ありました。
しかし、現状のままではいつまで経っても仕事に追いまくられる状態を脱出することはできそうもありません。
そこで、嶋崎はどうせやるなら、この機会になんとか現状を変えてやろうという、意気込みと期待の入り混じった思いでミーティングに臨みました。
初回のミーティングには部長と班長、そして同僚のユニットリーダーが出席していました。
役割
監督者の役割・使命を再認識して、やるべきことを見つめ直し、具体的な行動を起こしていくというのが、活動の趣旨です。
「役割・使命か、、役割なんかじっくり考えたこともなかったな」と、嶋崎は頭の中で独り言を言いました。
(続く)
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