「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。
「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。
この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ
「意識のしるし」を書いていきます。
今回は、植物状態の患者に意識があるか否かをモニターする方法を、聴覚を対象にして研究した事例を整理します。
聴覚的にP3波を引き起こすのはとても簡単です。P3派とは、脳のウェブが同期した場合に示す大規模な脳波のことです。
クラシック音楽の静粛なコンサートの最中に、突然誰かの携帯電話の音が鳴っていることに気づくと、あなたの脳には大規模なP3波が生じます。
スタニスラス・ドゥアンヌたちの研究チームが考案した方法は、「ビー ビービービー.…」など、規則正しく同じ音を繰り返し、そのうち突然「ブー」などの異なる音を鳴らすというものです。
被験者が目覚めて集中していれば、この逸脱音は、意識の存在を示すP3波のような脳波を引き起こします。
この脳波が単に音の強さや、他の要因によって引き起こされたのではないことを確認するために、パターンを逆転させ、「ブーブーブーブー……」を標準音に、また「ビー」を逸脱音にしてテストしました。
研究チームはこのトリックを用いて、与えられた文脈内で特定の音が生じたときの意外性だけによってP3波が生じることを実証できました。
しかしこのシナリオでは、逸脱音によって、P3波だけでなく、無意識の処理を表す一連の初期段階の脳の反応も起こるという結果になりました。逸脱音が発せられてから-00ミリ秒しか経過しないうちに、聴覚皮質が、大きな反応を示したのです。
この反応を「ミスマッチ反応」、あるいは陰性電位として頭頂部で生じるために「ミスマッチ陰性電位(MMN)」と呼びます。
このMMNが意識のしるしではなく、本人が注意を集中していようが、ぼんやりしていようが、あるいは本を読んでいても、映画を観ていても、眠っているときでも、昏睡状態でも、音の新奇性に対して喚起される自動反応である点が問題です。
この反応は無意識の処理で起こる反応で、意識の介在は、無いようです。
人間の神経系には、無意識のうちに機能する新奇性検出器が備わっているようです。
この装置は、逸脱音をすばやく検出するために、入力された刺激と、過去の一連の音に基づく予測を比較します。
脳内ではこの種の予測が至るところで実行されており、多くの皮質の区画にも、予測や比較を行なう単純なニューロンネットワークが存在するのだと思われます。これらの作用は自動的で、その結果だけが気づきや注意の対象になります。
これらの作用は、新奇性という尺度が意識のしるしとして通用しないことを意味します。
MMN反応は、聴覚皮質が新奇性を検知する能力を失っていないことを示すだけで、患者に意識があることを証明するわけではありません。
つまりこの反応は、高度な反応ですが、意識の外で機能する初期段階の感覚作用です。
今回の研究の課題は、それに続いて起こる脳の事象を分析することです。
新奇性に対して、意識による反応を喚起するテストを実施するために、研究チームは、局所的新奇性と大局的新奇性を対置させる新たなトリックを考案しました。
この「ビービー ビービーブー」五音の連続を数回繰り返します。すると脳は、四つの「ビー」のあとに一つの「ブー」が続くパターンに慣れ、そのために意識のレベルでは意外性は消失します。それでも最後の逸脱音は、初期のMMN反応を引き起こし続けます。
聴覚皮質は、大局的なパターンには気づかずに、「ビー」音が連続するという予測に執着し、それが最後の「ブー」音によって侵犯されると見なすようです。
P3波は、この場合でも密接に気づきに関連します。被験者が五音の大局的なパターンに気づき、最後の逸脱音に意外性を感じなくなると、P3波は消えます。
このあとで、たまに「ビービー ビービービー」という逸脱音を含まない五音を提示することで、さらにその規則性を破ることができます。
このようなまれに起こる逸脱は、再びP3波を引き起こします。つまり脳は、前に聞いたことがある単調な五音を新奇なものとして分類したのです。
脳が以前効いたことのある音を新奇なものと判断したということは、ワーキングメモリに残る既存の音の連続とは違っているという事実を検出したと捉えることができます。
研究チームは、初期の無意識の反応がなくてもP3波を引き起こせることを確認できました。
被験者に逸脱パターンを数えさせれば、その増幅さえ可能になります。
実験では、この局所/大局テストは有効に機能することがわかりました。
研究チームは、非常に短い記録セッションのあとでも、この広域的なP3波反応を、すべての健常者でも起こることが確認できました。
聴覚によるP3波は、困難な視覚課題を与えて注意をそらすと消失しましたが、心を自由にさせておくと、また出現しました。つまり規則に気づかなかった被験者には、P3波は出現しませんでした。
リオネル・ナカーシュは、前記の研究の後、パリのサルペトリエール病院でこのテストを恒常的に実施するようになました。
22人の植物状態の患者のうち、2名だけが例外的にP3波を示し、その後数日以内に最小意識状態へと回復しました。
ひどい自動車事故に遭遇した若者の事例があります。
この若者は、三週間昏睡状態に陥ったまままったく反応がなく、あまりに多くの合併症を誘発したため、医療チームは治療を続けるべきか否かを検討していました。
しかし彼の脳は、大局的な逸脱に依然として反応を示していました。
リオネルは、「彼は、一時的に一種の閉じ込め状態にあり、残存する気づきを表現できないでいるのではないだろうか?」と考えました。
リオネルは、数日のうちに回復に向かう可能性があると医師を説得しました。
そしてその指摘どおり、この患者はやがて意識を完全に回復しました。
事実、状態は劇的に快方に向かい、彼はほぼ普通の生活を送れるようになったのです。
音の連続の繰り返しを検知するためには、被験者は連続する五音を記憶し、それらを一秒以上が経過してから発せられる次の五音と比べなければなりません。
数秒間情報を記憶しておく能力は、意識ある心の証しでもあります。
この機能は、「個々の音を包括的なパターンへと統合する」「いくつかの包括的なパターンを比較する」という二つの局面で必要になります。
「ビービー ビービーブー」という音の連続を繰り返し聞いていると、脳は、最後の逸脱音に慣れてしまいます。
この逸脱音は、聴覚野では依然として一次レベルで新奇性シグナルを生みますが、二次レベルのシステムではその音を予測するようになります。
その後五音とも「ビー」から成る音の連続を聞くと、この二次レベルのシステムは不意をつかれるのです。
脳は、一次レベルの新奇性検出器を迂回して、意識に密接に関連する二次レベルのシステムの能力を動員しようとするからです。
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