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執筆者の写真Hatsuo Yamada

私ちは「気づくこと」で、無数にある神経回路を使って、思考を始めます

更新日:2022年5月29日

「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。

「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。


この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ

「意識のしるし」を書いていきます。


 

スタニスラス・ドゥアンヌたちは、「グローバル・ニューロナル・ワークスペース」仮説を主張しています。その骨子は、「意識は脳全体の情報共有である」という明快なものです。


この理論を見ていくことで、「意識とは何か」「意識はなぜ生じるのか」いついて、勉強していきたいと思います。


特定の情報に気づいていると私たちが認識するとき、その情報が特殊な保管領域に蓄積され、他の脳領域にも利用可能になります。


無意識の状態の脳の中をよぎる無数のイメージのうち、現在の目標に合致したもの=気づいていることが選択されます。

そして、意識はその情報を脳内の高い次元の意思決定システムが、利用できるようにします。


心理学者のバーナード・バースは、これを「グローバル・ワークスペース」と呼びました。「グローバル・ワークスペース」は、個人的的な心のイメージを自由に喚起し、無数の機能に特化した心のプロセッサーに伝達する脳内のシステムをを示します。


「グローバル・ワークスペース」は、意識は脳全体の情報共有の場であるという意味です。

私たちは、何かを意識するときはつねに、対応する外部刺激が途絶えたあとでも、それを長く心に留めておきます。


脳は情報をワークスペースに持ち込み、最初に知覚した時間と空間に関わらず保持できるのです。


その結果、「言語プロセッサーに送って、それに名前をつけることができる」など、私たちはその情報を好きな方法で利用できます。


また長期記憶に蓄えたり、未来の計画に用いたりすることもできます。情報の柔軟な伝播は、意識の主要な特質の一つなのです。


ワークスペースという概念は、注意と意識に関する初期のさまざまな心理学説を統合したもので、早くも一八七〇年には、フランスの哲学者イポリット・テーヌが、「意識の劇場」というたとえを用いています。


テーヌによれば、意識は、一度にはただ一人の演者の声しか聞けないように仕向ける幅の狭い舞台のようなものです。

人間の心は、劇場のフットライトのある先端では狭く、背景に退くにしたがって広くなる舞台にたとえられています。


先端では、たった一人の演者が占める余地しかありません。先端から離れるにしたがって、光から遠ざかるので、背後にいる他の演者は、ますます姿がぼやけていきます。


さらにこれらのグループの背後、舞台裏や脇に近い位置にいるその他無数の演者は、ほとんど姿が見えないが、呼ばれれば前に出てきます。


テーヌのこの比喩は、フロイトが登場する数十年に発表されました。

ただ一つの情報だけが意識にのぼること、また、私たちの心が膨大な種類の無意識のプロセッサーから成ることを巧みに表現していると思います。


意識のワンマンショーをサポートするために、心は大勢のスタッフを抱えているのです。つまり、意識の内容は、背後に控える無意識の活動がサポートする無数の活動から生じます。


「脳内に小人が住んでいる」という説が言われた時期もありますが、グローバル・ワークスペースの観客は、脳内の小男ではなく、メッセージを受け取り、自己の能力に従ってそれに働きかける、無意識のプロセッサーの集合なのです。


集合的な知性は、脳内で選択された情報の交換を通して生じます。

この考えは何も新しいものではなく、人工知能(AI) の創成期には研究者が、パソコンの「クリップボード」に類似する共有データ構造を通して、サブプログラム同士がデータを交換するという概念を提唱しました。


その意味において、意識のワークスペースは、心のクリップボードだという表現が分かりやすいかもしれません。


私たちが気づいた情報は、脳内のニューロンの集合体が利用可能なものになり、意思決定や意図的な行動を導いています。そしてそれによって、それらの行動が「自己の統制下に置かれている」という感覚が生まれるわけです。


現代の認知心理学者は、「中心的なボトルネック」、あるいは幸運な少数者のみが入場できるVIPラウンジにも似た「第二の処理ステージ」などと、コンシャスアクセスをとらえています。


言語、長期記憶、注意、意図に関するシステムはそれぞれ、意識された情報を交換し合う心のコミュニケーションを行う神経回路の構成要素であります。


このようなワークスペースの働きのおかげで、私たちが気づいている情報は、任意のルートで配信され、文の主語になり、記憶の核心を構成し、注意の焦点となり、次の行為の中核となっていくのです。

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