無意識情報の5形態

「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。

「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。


この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ

「意識のしるし」を書いていきます。


無意識に関する記事(41件の目次)は、ここです。

意識に関する記事(12件)は、ここです。

 

前回のブログでは、無意識の情報を3つに分類するところまで見ていきました。


無意識の情報はさらにあと二つのカテゴリーが存在します。



ニューロンの持つ情報が無意識に留まる第四の様態として、「複雑な発火パターンへの希釈(紛れ込み)」があげられます。


ここでは、「希釈」という表現になっていますが、私は、「紛れ込み」という言葉の方が理解しやすいと思いますので、この私のノートには「紛れ込み」と表現します。


例えば、目で判別できないほど稠密に表示された格子模様を見たあなたは、一様に赤い画面を知覚するだけですが、脳内では格子模様は実際にコード化されています。(写真はイメージです。)


格子の方向によって、それぞれ別の視覚ニューロン群が発火していることが確認できます。


一次視覚野の極端に錯綜した時空間的な発火パターンに依拠しているために、グローバル・ワークスペースのニューロンには、識別できないくらい複雑なコードになって記憶されているいるようです。


情報が意識されるには、ニューロンのコンパクトな集合によって、もう一度明確な形態でコード化し直される必要があります。

情報は、無数の無関係のニューロンの発火に紛れてしまっていると、意識されないのです。


私たちが目にするどんな顔も、耳にする言葉も、無数のニューロンそれぞれが、視覚や聴覚的場面のごくわずかな部分を検知し、時空間的に錯綜した様態で、スパイクを放つことで記憶されていきま。


これらの入力パターンのそれぞれには、解読できるとすれば、話者、メッセージ、情動、部屋の大きさなど、数限りない情報が含まれていることがわかります。(現在では、まだ解読はできません。)


私たちが潜在的な情報に気づくのは、高次の脳領域で、それらが意味づけられたカテゴリーに分類されたあとになりま


感覚入力からの情報を順次抽出して、次第に抽象性を増して明確化していくことは、階層的に構造化された感覚ニューロンの重要な役割なのです。


感覚をトレーニングすることで、かすかな光景や音に気づけるようになります。

ニューロンはあらゆるレベルで、微細な感覚メッセージを増幅すべく、自らの特性を調節しているからです。


学習する以前にも、メッセージは感覚野に達してはいますが、暗黙的に存在するにすぎません。この事実から、フラッシュされた格子模様やかすかな意図など、脳内には、本人さえ知らないシグナルが行き交っていることがわかります。


脳画像法によって、これらの暗号形態の解読が可能になりつつあります。

アメリカ陸軍は、訓練を受けた観察者に、一秒あたり10回の高速度で明滅させながら衛星写真を見せ、脳の電位をモニターして、敵の航空機の存在に対する無意識的な直観を検出するというプログラムを開発しました。


無意識の領域には、無尽蔵の資源が発掘されるのを待っています。

コンピューターに支援された神経コードの解読技術の発達は将来、感覚によって検知されながら意識には見落とされているミクロのパターンを増幅することで、厳密な形態の超感覚的知覚、すなわち環境に対する高められた感覚の利用を可能にするかもしれません。


無意識の知識の五つ目のカテゴリーは、「潜在的な結合」という形態です。


私たちがニューロンの発火パターンに気づくのは、脳全体にわたって活性化された細胞集成体が形成されるという条件に当てはまったときだけです。

莫大な量の情報が、静的なシナプス結合に蓄えられています。生まれる前ですら、ニューロンは外界を統計的にサンプリングし、それに神経結合を適合させていることがわかっています。

数百兆の単位で人の脳内に存在する皮質シナプスは、私たちの全生涯の眠った記憶を含んでいます。


とりわけ環境に対する脳の適応の最盛期をなす生後数年間は、毎日何百万ものシナプスが形成されたり、破壊されたりしています。各シナプスには、シナプス前細胞と後細胞の発火の可能性に関して、ごくわずかずつ統計的な情報が保存されていくのです。


このような結合の力によって、脳のいたる所で、学習された無意識の直観が支えられているのです。


低次の視覚野では、皮質結合は隣接する直線が結びついて対象物の輪郭を構成するかという統計情報を編集しています。

聴覚・運動野では、音のパターンに関する暗黙の知識が蓄えられています。


ピアノの練習を何年も続けると、これらの領域の灰白質の密度に検知可能な変化が生じますが、これは、シナプスの密度、樹状突起の大きさ、白質の構造、ニューロンを支えるグリア細胞の変化に起因すると考えられています。


また、海馬(側頭葉の下に位置するカールした組織)には、いつどこで誰と一緒にいるときに、どのようなできごとが起こったかに関して、シナプスによってエピソード記憶が集められます。


私たちの記憶は、何年間も眠ったままでいられます。その内容は、複数のシナプス・スパインに圧縮して分配されています。


このシナプスの知恵を直接取り出すことができたら、どんなに素晴らしいかと思いますが、シナプスの情報を直接取り出すことはできません。

なぜなら、そのフォーマットは、意識的思考を支援するニューロンの発火パターンとはまったく違うからです。


想起するためには、記憶は眠った状態から活性化された状態へと変換されねばなりません。

記憶の想起に際して、シナプスは正確に発火パターンが再現されるよう促す働きがなければ、私たちは過去のできごとを思い出せません。


記憶の意識化とは、過去に経験した意識の瞬間の再現、つまりかつて存在した活性化パターンの近似的な再構築なのです。

脳画像法が示すところでは、記憶は、過去のできごとを意識に再現する前に、前頭前皮質、およびそれと相互結合する帯状回に広がる、ニューロンの明示的な活動パターンにまず変換されなければなりません。


「John believes that he is clever」という文で、代名詞の「he」はジョン自身を指しています。

「He believes that John is clever」はどうだろう?この場合の「He」はジョンを指していません。

「The speed with which he solved the problem pleased John」はジョン自身を指しています。。


私たちは答えを知っていますが、いかなる規則に従って判断しているかはわかっていません。

私たちの言語ネットワークは、語句や文章の処理のために配線されていますが、私たちの気づきは、その配線図にはアクセスできないのです。それは、コンシャスアクセスによっては処理できないフォーマットで書かれていたからなのです。


文法は算術と鋭い対照をなしています。4×5を計算するとき、私たちは完全にその過程を意識しています。

各段階での途中計算の性質と順序、さらにはときに犯す間違いさえ、内省によってアクセスすることができます。



それに対して言葉を処理する際には、逆説的にも、私たちはそれに対応する内的なプロセスについて語ることができません。統語プロセッサーによって解決される課題と、算術問題の難度は変わりません。


しかし私たちは、どうやってそれを解決しているのかをまったく知りません。

複雑な算術計算は、ワークスペース・ネットワークの主要ノード(前頭前野、帯状回、頭頂葉の領域)の直接的な管理のもとで、一ステップずつ実行されます。


そしてその種の複雑な手続きは、意識の基盤をなす神経回路を構成する、前頭前野のニューロンの発火パターンに明示的にコード化されています。

つまり個々の細胞の集まりによって、目的、方針、手順、実行ステップ、さらにはエラーやその是正方法までがコード化されているのです。


それに対し文法は、左上側側頭葉と下前頭回を結ぶ接続の束によって実装され、したがって背外側前頭前皮質にある、心的努力を必要とする意識的な処理のネットワークを動員しないのです。


麻酔下でも、言語を司る側頭皮質の大部分は、気づきの働きなしに自律的に言語を処理し続けます。

ニューロンによる文法規則のコード化の方法はまだ解明されていませんが、

スタニスラス・ドゥアンヌの予測では、「それは暗算のコード化方式とは根本的に異なるはずだ」ということです。

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