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執筆者の写真Hatsuo Yamada

昏睡患者が執筆した書籍『潜水服は蝶の夢を見る』

更新日:2022年5月29日

「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。

「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。


この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ

「意識のしるし」を書いていきます。


 

毎年、自動車事故、卒中、自殺未遂、一酸化炭素中毒、水難などによって、多くの大人や子どもが重度の障害に陥っています。動くことも話すこともできない、昏睡状態の患者や四肢麻痺患者は、精神生活の輝きを失ったかのように見えます。


しかし、心の奥深くには、まだ意識は宿っている例が実際にあるのです。


フランスのファッション雑誌『ELLE』の編集長、ジャン = ドミニック・ボービーは、1995年12月8日43歳のときに、脳出血で倒れ、「ロックトイン・シンドローム」と呼ばれる全身の身体的自由を失った状態に陥りました。


病床で唯一動かすことのできた左目の瞬きだけでしたが、病床で『潜水服は蝶の夢を見る』を執筆しました。彼はこの本が出版された2日後に亡くなりました。

ボービーは12月8日から20日間続く昏睡状態に陥りました。

病棟で目覚めたときには、片方の目と頭部の一部以外は完全に麻痺していました。その後彼は、15か月間生き続け、そのあいだに一冊の本を執筆し、出版したというのです。


閉じ込め症候群患者の内的世界を感動的に綴った著書『潜水服は蝶の夢を見る』(1997)は、たちまちベストセラーになりました。



身動きがとれない自己の身体に閉じ込められたボービーは、アシスタントがE、S、A、R、I、N、T、U、L、O、M……とアルファベットを使用頻度の高い順に唱えるあいだに、左目のまばたきによって一文字ずつ指定しながら一冊の本を著したそうです。


彼は、20万回のまばたきによって、卒中で損なわれた美しき心を描く物語を生み出しました。そして彼は、本が出版されてからわずか3日後に、肺炎のために亡くなったのです。


私は映画を観ました。身動きができない不満で溢れたストーリーだと予想していたのですが、そんな雰囲気は微塵もありませんでした。


身動きのとれない身体に閉じ込められた状態を彼は潜水服に例えました。ボービーの生き生きとした想像力と機敏な考え方が、意識が自律的であることをみごとに証明しています。


身動きのとれない状態でも、彼の心の内部では、視覚から触覚、あるいは快い香りから深い感情に至るまで、無数の心的状態が、自由に流動しています。


しかしボービーと同じような状況に置かれた患者の多くは、自分が内的世界を保っている事実に誰も気づいていないという状況にあります。


半分以上のケースでは、家族がまず気づきます。残念ですが、脳の損傷後適切な診断が下されるまで、平均して2.5か月がかかっています。実際は4年間診断が下されなかった患者もいるそうです。


患者の麻痺した身体は、ときおり不随意のひきつりや、定型化した反射を示すだけなので、意図的な目の動きやまばたきは、気づかれたとしても、反射作用による動きと見なされてしまいます。

まったく無反応で「植物状態にある」と診断されていた患者のおよそ40パーセントは、精密検査によって、最小限の意識の徴候を示すことがいずれ判明することになります。


世界中の集中治療室では、半数の患者が臨床的判断にり、生命維持装置を外した時に死亡しています。


残されている意識を検知できれば、このような悲劇は起こり得ません。しかし現在では、明るい見通しが立ちつつあるのです。


神経科学者や、脳画像法を駆使する研究者は、意識の状態の特定に大きな進歩をもたらしてきました。

神経科学は今や、患者の意を検知し、彼らとコミュニケーションを確立するための、より簡素で安価な方法の導入へと歩を進めています。


認知科学コーチングからは、脇道に逸れてしまいますが、この後このブログでは、神経科学の今後の展望などを少し、見ていきたいと思います。

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