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在庫は必ずしも「悪」ではありません

こんなタイトルにすると、「怪しいな」と言われてしまいそうですが、トヨタ生産方式の原点の考え方に照らすと、これは正しいのです。


トヨタ生産方式は「在庫は悪」という言葉が有名になっています。

TPSは、「お客様のニーズに応える」という考え方が原点ですので、必ずしも悪ということではありません。


この言葉の表面だけを暗記してしまうと、大きな誤解をされてしまう心配があります。



JIT(Just In Time)は、「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ調達して造る」という基本的な考え方で運営されています。


最近の半導体不足で、世界中から半導体をかき集めて、なんとか生産を繋いでいる姿を見て、

「在庫をたくさん持ちながらJIT生産を続けるというのは、矛盾していませんか?」という疑問を持たれる方が、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか?



トヨタ生産方式の本質を理解していれば、在庫は悪」という言葉は、必ずしも正確ではないのです。


「製造業はお客様のために存在する」という考えがTPSの原点となる考え方です。


在庫は悪」という言葉は非常に狭い意味で言われています。

  ムダな在庫はお客様が望んではいらっしゃらない。

      →だから在庫は悪なのだ。

                  という一面しか捉えていません。


 トヨタ自動車は、たくさんのお客様のニーズに応えるクルマを造るために存在しているという考え方が原点です。


しかし、「早くトヨタ車に乗りたい」と望んでいらっしゃるお客様を待たせてしまっているというのが、今のトヨタ自動車の状況なのです。


2021年8月に発売された新型「ランドクルーザー」などは人気が過熱するあまり、22年1月の時点で納車までに4年かかるとトヨタ自動車が発表しました。


ところが、足元ではクルマを組み立てるために必要な部品・材料が逼迫しています。クルマはどんなに小さな部品であっても、その1つでも足りなければ組み上げられません。


 こうした「非常事態」では、お客様に最短でクルマを渡すために「あるべき在庫」という考え方を優先させます。


この考え方は何も今回初めて出て来たものではなく、「適正在庫」という言葉が昔からあるのです。


これと似た概念になりますが、ライン生産で後工程との部品の連携をスムースにさせるためには、工程間に仕掛かりを持っておくという考え方があります。「標準手持ち」という言葉で呼びます。


在庫にはこのように”意味のある在庫”という概念が存在します。


「早くトヨタ車に乗りたい」というお客様ニーズを満足させることが最優先になり、そのために必要な在庫は、「適正在庫」なのです。


例えば、ラインサイドに部品が積み上げられているとします。

一見して何か異常だと誰の目で見ても分かります。


しかし、ライン生産のリードタイムを適正にするためには、標準手持ちという適正な在庫が必要なのです。


少しも、悪などではありません。


例えば、取引している部品メーカーにトラブルが発生し、1カ月後に高い確率で部品の調達が止まるということが分かっている場合でしたら、1カ月分の部品を在庫としてストックしておいておきます。


例えば、中国で都市封鎖が発生して工場が止まったときに、ベトナムで大量に生産して在庫を持ちながら部品・材料を世界中に供給し続けるという方法もありなのです。


だからと言って余計な在庫を許容するものではありません。


製品が売れるかどうか分からないのに、安く買えるからと言って、部品・材料を大量に調達したり、人員や機械の稼働に余裕があるからと造りだめしたりして抱える在庫はまさに悪と呼ばれる在庫です。


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