「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。
「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。
この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ
「意識のしるし」を書いていきます。
オーケストラの音からパンの焦げる匂いに至るまで、あらゆる意識的な経験は、大規模な脳神経回路の活動に由来していることを見てきました。
意識的知覚が生じるとき、ニューロンのグループは、最初は特殊化した局所領域で、その次には皮質の広い範囲で、連携しながら発火し始めます。
最終的には、初期の感覚野と緊密に同期しながら、前頭前野と頭頂葉の大部分に浸透していきます。
意識的な気づきは、一貫した脳のウェブが突然点火する、この時点で確立していることがわかりました。
被験者が意識的な知覚イメージを経験したか否かを示す生理学的な兆候=「意識のしるし」が四つ見つかりました。
意識される刺激は、頭頂葉、および前頭前野の神経回路が突然点火するニューロンの活動を引き起こす
コンシャスアクセスは、刺激が与えられてから三分の一秒が経過してから生じる、P3波と呼ばれる遅い脳波をともなう
意識が点火すると、高周波振動が突発的に起こる
互いに遠く隔たった多数の皮質領域が、双方向の同期したメッセージを交換し、広域的な脳のウェブが形成される
神経科学では、実験によって、皮質の高い次元の神経回路に対する干渉が、無意識の処理には影響を及ぼさなくても、
意識を混乱させることがわかっています。
また、実在しない光や、異常な身体運動の感覚などの幻覚を引き起こす方法もわかってきました。
ニューロンの電気的活動が、心の状態を引き起こしたり、心の状態を破壊したりしする方法もわかっています。
スタニスラス・ドゥアンヌはこう言います。
「神経科学者は、映画『マトリックス』でみごとに描かれていた、哲学者の空想「培養槽のなかの脳」を原理的に信じている。
いかなる日常的な心の状態も、適切なニューロンを刺激したり沈黙させたりすることで幻覚としていつでも再現できる。そして神経活動のなだれは、心の交響楽を生む。そうわれわれは考えているのだ。」
いまのところ、『マトリックス』が描くファンタジーの実現にはほど遠いというのが現実です。
何十億ものニューロンをコントロールして、皮質の表層に正確に描くことは今のところできません。
しかし、脳への刺激を与える新しい技術として、電流ではなく光によってニューロンを刺激する、
光遺伝学による新たな発見が期待されています。
この技術は、光子を、ニューロンの電気信号に変換する、光に敏感な「オプシン」と呼ばれる分子が、
藻類やバクテリアに発見されたことがきっかけになって生まれました。
近い将来、私たちの心を支える神経コードの解読に向けて、突破口が開ける可能性に期待したいと思います。
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