私は昨年2021年、タイス式(パフォーマンスエンハンスメントコーチング)と、苫米地式コーチングのコーチとしての認定をいただきました。
私が会社の現役時代にもコーチングを受講しました。
2000年に、トヨタ本社のTQM推進部というところにところに、約1年間出向していた時に、コーチングの導入をすることになって、そこで体験受講をさせていただきました。
その時のコーチングの会社の名前は忘れてしまいましたが、上司と部下のコミュニケーションの方法について、「分かりやすい教え方をするな」と感心したことを記憶しています。
近距離でボールを相互に投げ合う動作を、コミュニケーションに例えて、実際に講師がボールを投げながら、解説してくれます。
相手が取りやすいところに、柔らかくボールを投げてあげましょう
直球を強い力で投げたら、相手は受け取れないこともあります
相互にやり取りをしているのに、いきなりボールを地面に向かって投げ捨てるのは乱暴です
という具合に説明してくれるのですが、非常にわかりやすかったことを今でも記憶しています。
TQMのマネジメントの基軸に、方針管理があります。
方針管理は、年度の重点課題を組織で共有して、年初に課題の達成方策を立案し、方策の実施状況をフォローして、確実に課題達成を行う仕組みです。
「上司が一方的に思いついた課題を、部下に丸投げする」これは、2.に相当します。
「モチベーションを上げろ!」これも2.です。
モチベーションは、課題を達成した後に生まれるものですから、「モチベーションを上げろ!」という前に、成功体験をさせてあげましょう。
「そんなこと、自分で考えろ!だからお前はダメなんだ」これは、3.です。
やはり1.「相手が取りやすいところに、
柔らかくボールを投げてあげる」ことが重要です。
年度の重点課題の解決する過程で、上司と部下、先輩と後輩で議論しながら計画を作っていく過程がコミュニケーション場、そのものです。重点課題は、大抵解決プロセスが出来上がった時点で、90%は解決の見込みが立っています。
「コーチング」と言っても上記のコーチングは、上司と部下の上手なコミュニケーションの取り方を教えることが主な内容でした。
しかし、タイス式の元祖、ルー・タイスがアメリカで始めたコーチングは、世界各国の大統領をはじめとして、アメリカの軍隊、フォーチュン500の半数以上の会社で採用された、元祖・本物中の本物です。
そこに苫米地博士が招かれ、ルー・タイスと一緒に世界の要人のコーチングをしたり、子供向けのカリキュラムを作ったりしていました。
ルー・タイスの晩年には、ルーが博士を後継者として指名したくらい、博士に対する信頼が厚かったのです。
そして、ルーが亡くなる直前まで、彼は日本に来て講演をしていました。
そのビデオを使って、タイス式の講義が行われます。
現在アメリカでは、水泳のオリンピックコーチのマーク・シューベルトは、ルーの意志を継いでいますが、それ以外の関係者は、儲け主義に走り、ルーの後継者ではありません。
マークは、オリンピックで23個の金メダルを獲得した、マイケル・フェルプス選手のコーチですが、マーク自身は、水泳の選手ではありません。
ターガーウッズがある試合の終盤でリードしていて、相手がパットを決めるとプレイオフになってしまうという場面で、『どうか、このパットを鎮めてくれ!』と念じていた話は有名です。
彼の父親のアール・ウッズは、アメリカ軍で、タイス式のコーチングを受けていて、コーチングを息子のタイガーに伝授したと言われています。
タイガーとしては、「ここでプレイオフにもつれ込んで、勝利を挙げたい」という高いレベルのエフィカシーが働いた結果、このような常人には考えられない思考になっているのです。(エフィカシーとは、ゴールを達成する自己能力の自己評価のことです)
現在は、タイス式コーチングも苫米地式も苫米地博士が認定を出しています。
私も苫米地博士に直に認定をいただきました。
ルー・タイスがコーチングを始めた当初は、心理学の権威の力を借りていましたが、苫米地博士が加わってからは、認知科学の知見をふんだんに導入しています。
例えば、「ゴールを現状の外側に設定する」という知見は、認知科学からくるものです。
コミュニケーションの話をするつもりが、コーチングの話になってしまいましたが、同じコーチングと名乗っていても、中身は全く違うものです。
コーチングは決して、単純なコミュニケーション技術を教えるものではありません。
人生全般を自分の納得のいく生き方にすることが本物のコーチングです。
ここだけは誤解のなきよう、お伝えしておきます。
人間の脳の中には、コンフォートゾーンというものがあります。
他のブログ記事でも何度もコンフォートゾーンには触れています。
人間が一番居心地の良い領域と、理解していただければ良いと思います。
サッカーの試合で、自分のホームと相手型のアウエイで戦った時、ホームの方がリラックスして良いパフォーマンスが出るという理由が、ホーム=コンフォーとゾーンで試合をしているからなのです。
プロがアウエイで力が出せないというのでは、使い物になりませんが、アマチュアでもホームとアウエイではパフォーマンスが違ってきます。
日本では、石川遼くんが期待されていたにもかかわらず、アメリカで勝てなかったのは、彼のコンフォートゾーンが、『こんなに良いスコアが、続くわけがない』ということで、無意識がスコアを崩したと言われています。
私たちアマチュアゴルファーもそうです。
いつも90ストロークくらいでラウンドしているゴルファーが、たまたま前半の終了まで+3でした。
『このままいけば、自己最高が出そうだ』と自分の意識では考えても、無意識が『そんなはずがない』と否定して、大叩きをするのと同じです。
これらの例は、コンフォートゾーンのなせる技なのです。
コンフォートゾーンは、よく言えば、「自分がリラックスして、自分の本来の力が出せる最適な領域」です。
その一方で、「安住の領域から一歩も外に出たくない自分の殻」なのです。
殻を破ることができるのが、現状(コンフォーtーゾーン)の外側に設定したゴールです。
人は皆コンフォートゾーンを持っています。
自分の部下に向かって、「上司が一方的に思いついた課題を、部下に丸投げ」したら、思いっきり跳ね返す力が働きます。
まして、「そんなこと、自分で考えろ!だからお前はダメなんだ」なんて言ったら、上司を敵だと思います。
ですから、「相手が取りやすいところに、柔らかくボールを投げてあげる」ことが大事なのです。
人間の持つ心理的性質の1つで、「出だしに違和感がなければ、全てを受け入れてしまう」があります。
話し手は、まず相手が受け入れやすいように、相手の歩調(ペース)に合わせて話を組み立てます。
これをペーシングと言います。
それに引き込まれて、相手が話し手の考えを受け入れてしまうと、その相手は話し手にラポールを築きます。
一つの臨場感空間を二人以上が共有すると、共有している人たちの間で特別な感情が生まれます。これを臨床心理学では「ラポール」と呼んでいます。
学校では、最初は生徒が担任教師を「先生」と言って、ラポールを感じて尊敬していますが、付き合いが長くなってくると、「センコウ」と呼ぶようになります。🙃
有名なストックホルム症候群という話があります。
銀行強盗に入った強盗に、密室で(男らしい?犯人に)ラポールを感じた女子行員が、警察が突入して、その強盗を逮捕しようすると、警官の行為を妨害しようとしたという話です。
その後、二人は結婚までしたそうです。最後には、女性が男性を尻に敷くところまで後日談があります。
ただ、この例はハイパーラポールと言って、通常のラポールとは区別して捉える必要があります。
ラポール、ハイパーラポールとも賞味期限があるようです。
部下と話をするときには、相手にコンフォートゾーンのあることを忘れないように
相手が取りやすいところに、柔らかくボールを投げてあげる
出だしに違和感がなければ、全てを受け入れてしまう
相手が受け入れやすいように、相手の歩調(ペース)に合わせて話を組み立てます
これで、ラポールを築けたらもうこっちのものです。
最後にもう一点、これをお忘れなく。
課題を与えるときには、部下のやりたいこととが、組織の課題に包含されていることが重要です。
例えば、部下が、「自分の仕事を、先輩のように上手くやれるようになりたい」と考えているとします。
そのときに上司として、ひとつ抽象度を高くして、組織の生産性向上につなげて、
「君がこの技術を身につけてくれたら、生産性は上がるから、是非1ランク上に挑戦してほしい」
と言ってみたら良いでしょう。
そうすれば、組織としてのベクトルが揃ってきます。
当たり前のことですが、ベクトルが揃うと、力は同じ方向に強く働きます。
コンフォートゾーン、ラポール、ベクトル合わせが今回のキーワードです。
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