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執筆者の写真Hatsuo Yamada

カイゼンは、現状のありのままを見える化することから始めましょう。

更新日:2022年5月29日

カイゼンを始めるときは、現状をありのままに見つめることが大事です。


「ありのままですよ。」「ありのままに見える化しましょうね。」とお願いしても、

出来上がったものを見ると、すでにカイゼンが加わっていることがあります。


初めてカイゼンにチャレンジする人は、大抵の人が対策から入ってしまいます。


カイゼンセンスのある方は、かなり良い対策を思いつくことがありますので、

「こうすればいいんでしょ?!」と言わんばかりです。


少し待ってください。


あなたの無意識が、今までの記憶をサッと検索して、思い当たったことは、かなり良い線を行っていることは認めます。


しかし、思いついただけの対策を打ったとして、本当に完全に問題が解決するでしょうか?


このような対策案には、何か重要なことを見落としていることがよくあります。


ほとんど何かが漏れていると言っても良いでしょう。


改善の定石をマスターして、幾つもの問題を解決した経験のある方は、無意識が働いて、的確な答えに到達するものです。


幾つものカイゼン事例を解決した記憶が、脳に蓄積されていて、それらの事例を一つ上の抽象度の高い視点で見る思考方法が身についていますので、それができるのです。


全ての方とは言いませんが、経験があまりない方のセンスによる思いつきには、何か偏ったものがあります。


やはり、経験による事例の蓄積が少ない分、偏った対策案になってしまうのは、致し方ないのではないかと思います。


私は、製造現場から開発・設計の業務を多数カイゼンした経験による記憶がありますので、新たに改善するテーマに取り組む場合でも、一つ上の概念で見る癖が身に付いています。


まず、その仕事の存在意義、仕事の付加価値は何かを見ます。

仕事の付加価値をつけるプロセスが見えたら、それ以外の付加価値のないプロセスをできるだけなくしていきます。


そう考えると、改善の方針が浮かんできます。

  • やり直しをなくす

  • 製造では、ものに変化を与えないプロセスをなくす

  • 開発・設計でも、情報に変化のないプロセスをなくす 


など、ほとんど一瞬で方針が決まります。


それでも、対象の業務を細かく観察していませんので、それだけで全てを決めてしまうには、無理があります。何かの見落としが、ある可能性があります。


ですから、「自分にはカイゼンのセンスがある。」と自信持って言える方でも、カイゼンの定石を必ず踏まえて、進めていくことを忘れないようにしてください。


そのために、「現状のありのままの姿を見える化する」ことから、地道に始めましょう。


私たちはTPSのカイゼン方法から、現状の見える化を『表を取る』という言葉を使います。


表準の例


「現状のありのままの状態を表に出す」ということから、『表』という字を使います。


また、カイゼンの締めくくりには標準化をします。具体的には標準書を書き換えるというプロセスがカイゼンの仕上げ、歯止めをかけることです。


カイゼンの終わりが「標準」なら、始めは、それにちなんで、「表準」

「標準」と「表準」両方とも、音読みすると、『ヒョウジュン』になります。


表準は、「オモテヒョウジュン」と読んで、標準「ヒョウジュン」と区別します。


現状の見える化のプロセスに名前をつけるくらい、大事にしているというとも言えます。


上の図は表準の1例です。


ある機械を営業がお客様から受注して、設計がカスタマイズ、部品を手配して、製品を製作して、納品するまでを時間の流れ(横軸)と、関係部署(縦軸)を表現しています。


表準のスタイルは、これだけではなくいろいろあります。


会話を見える化するには、録音したものを文字起こしするという方法もあります。

これも、表準です。


TPSでは、「ものと情報の流れ図」というツールをよく使います。


上の図は、製造工程の前後をカイゼンする目的で作成したため、製造工程は簡略化していますので、情報の流れを細かく見える化しています。


ソフト開発で、アジャイルという手法がありますが、「バリューストリームマッピング」というツールを使っています。


これはLEANの人たちが、「ものと情報の流れ図」を「バリューストリームマッピング」という名称で展開したものが、始まりです。


LEAN PRODUCTION SYSTEMから、LEAN PRODUCT DEVELOPMENTを経て、アジャイルにつながっています。


カンバンや大部屋なども同じ経路で、アジャイルにつながっています。


プロセスの繋がりは、情報の流れで追いかけるともれなく見える化できます。



上の図は、

  • 「お子さんのいらっしゃる家族の喜ぶ姿」という情報を、開発者の脳にインプット

  • 開発者の脳にある知見が、付け加えられて、新製品が完成するというイメージです。

実際は、多くの担当者の知見が集まって、製品図面が完成するわけです。


このプロセスの流れを、抽象度を上げて見ると、

インプット情報とアウトプット情報の差の部分が、開発者の頭にある情報だということがわかります。


このプロセスを、開発者本人に書いてもらうと、本人が当たり前にわかっている知見が、漏れてしまうことがあります。


製造でも、表どりをするときに、ストップウォッチを片手に、作業者の動作を観察して表準を作成します。


動作に付加価値があるかどうかを見る目を持っているか否かで、出来上がりも違ってきます。


一言で、「現状のありのままを見える化する」と言っても、なかなか難しいものです。


そのプロセスをパスして、思いつきの対策を先に考えてしまうのでは、本物のカイゼンにはたどり着くことはできません。😎

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