「意識のしるし」の診断は、熟練した臨床医師より鋭敏になりました。

「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。

「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。


この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ

「意識のしるし」を書いていきます。


無意識に関する記事(41件の目次)は、ここです。

意識に関する記事(12件)は、ここです。

 

前の記事で整理した、マッスィミーニのTMSとEEGという二つの技術を巧みに組み合わせパルステストは、あらゆるケースに適用可能でだと考えられます。


しかし、どんな病院にも、TMSの生み出す強い衝撃を吸収する能力を持つ、高密度EEGシステムを設置できるというわけではありません。


このテストは理論的に言えば、暗闇でも、外部刺激がなくても、意識のある被験者は、脳領域間の遠距離コミュニケーションの徴候を見せるはずです。


脳の活動の恒常的な流れが、前頭前野と頭頂葉のあいだを行き交い、遠隔の脳領域間が同期しているはずです。


この同期の活動は、中間(ベータ)、および高(ガンマ)周波数帯域の、電気的活動の高められた状態に結びつき、大量のエネルギーを消費します。簡単にそれを検知できる方法が見つかれば良いのです。


PETスキャナーは、高エネルギーガンマ線を検出する高度な検知器であり、身体のあらゆる部位を対象にグルコースの消費量を測定できます。

PETによる測定を通して、意識が失われると脳の広範な代謝活動が低下することが、知られています。



この方法によって次のような注目すべき結果が得られました。


麻酔下、もしくは深い睡眠状態にある健常者には、皮質全体を通じてグルコースの消費に 50パーセントの低下が見られました。

また、昏睡状態や植物状態にある患者にも、グルコースの消費低下が認められました。


グルコース消費量、さらには酸素代謝量の低下の度合いは、脳の領域によって異なります。

前頭葉および頭頂葉の領域はもっとも長距離投射に富んだ脳領域です。

この事実は、意識的な経験に必須な領域であるということもできます。


過去20年間、無意識のうちにときおり言葉を発し続けていた患者がいました。

この患者のニューロンの活動と代謝は、左半球にある言語を司る皮質領域のわずかな区画に限定されていました。


意識を維持するのには、言語を司る皮質領域だけではなく、より広範な (ニューロンの)コミュニケーションが必要です。


残念ながら、脳の代謝それ自身は、意識の有無を推定する際の判断材料として十分なものではありません。


それとは対照的に、そしてより重要なことに、部分的に回復して「最小意識状態」へと移行した植物状態の患者の多くは、正常な代謝を示しません。


最新のMRI装置による高精度の画像も、意識の有無を決定する間違いのない予測因子を提供するわけではありません。


現時点では、解剖学的、あるいは代謝を示す機能的脳画像法では、神経系の情報の循環を正確に測定することは不可能です。


次の段階として、遠隔の脳領域間の同期の量自体を検知できる方法を検討する動きが始まりました。


ナカーシュのチームは、二つの脳領域間で共有される情報の量を測定するために、「wSMI(weighted Symbolic Mutual Information)」と呼ばれる、数学的な量を計算するプログラムを考案したのです。


このプログラムを患者のデータに適用すると、植物状態の患者とそれ以外の患者がはっきりと区別されました。


意識がある被験者と比較すると、植物状態の患者は、情報共有量が著しく低下していました。これは、少なくとも7〜8センチメートル離れた電極のペアに焦点を絞ると、うまく当てはまりました。


遠隔領域同士の情報の一斉伝達(同期)は、意識ある脳の特権だと言えます。また、その方向を測定することで、脳の会話が双方向的であることがわかりました。


機能の特化したスペシャリスト的領域たる後頭葉は、ジェネラリスト的領域である頭頂葉と前頭前野にシグナルを送り、それから逆方向にシグナルが戻されるのです。


種々の周波数帯域でのエネルギー量を測定する数学的な手段を適用したところ、意識の喪失によって、神経信号やニューロンの処理を特徴づける高周波数帯域における活動が消失し、睡眠時や麻酔下で典型的に見られる、非常に低い周波数帯域での活動が残ることが見出されました。


また、脳波振動の同期を測定したところ、皮質領域には、意識があるうちは領域間での情報のやり取りを調和させる傾向があることがわかりました。

これらの数学的な方法を用いた測定の結果は、おのおのやや異なる角度から意識という現象に光を当て、同一の意識状態に対して補完し合う視点を提供します。


ジャン = レミ・キングは、さまざまな測定手段をいかに結びつければ、患者の臨床状態の最適化された予測が得られるかを完全に自動的に学習するプログラムを開発しました。


それにより、20分間のEEG記録を用いて精度の高い診断が下せるようになり、植物状態の患者を意識があるとして誤診することはほぼなくなりました。


コンピューター・プログラムは3分の1については、意識の徴候を検出したのに対し、臨床診断では植物状態とされていましたが、そのうちの50パーセントは、数か月が経過するうちに、意識があるとして臨床的に診断される状態に移行しました。


予測能力のこの差は、結果の大きな相違をもたらします。

自動的な脳診断プログラムを用いれば、行動や態度として表に現れるはるか以前から、意識の徴候を検知することができます。


現在では意識のしるしの診断は、熟練した臨床医師より鋭敏になったのです。

新たな意識の科学は、いまや最初の実を結びつつあるのです。


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