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有名人を記憶する細胞

更新日:2022年5月29日

「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。

「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。


この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ

「意識のしるし」を書いていきます。


 

側頭葉前部の細胞が意識的知覚をコード化するのなら、その放電は意識が操作される方法とは無関係でなければなりません。

事実フリード博士らは、これらのニューロンの発火が、両眼視野闘争など、マスキング以外の方法が適用されたときの意識的知覚とも相関することを発見しています。



「ビル・クリントン細胞」(有名人のことを言っています)は、クリントン元大統領の顔が一方の目に提示されたときだけ放電しました。


チェス盤の画像を他方の目に提示し、両眼視野闘争によって元大統領の顔を視野から消すと、ただちに放電は停止しました。


元大統領の顔は網膜上には映っているはずですが、主観的には競合イメージによって消され、彼の画像による活性化は、意識が醸成される高次の皮質中枢には到達できなかったということなのです。


活動中でも活動していなくても、細胞が構成するパターンは、元大統領の顔といったような主観的な知覚の内容を表す内部コードを形成します。


この意識のコードは明らかに安定しており、再生が可能です。

患者が元大統領の顔について考えると、まったく同じ細胞が発火するのです。


外部からの客観的な刺激の入力がまったくなくても、彼の顔を思い浮かべるだけで、その細胞は活性化します。

側頭葉前部のニューロンの大多数は、実際の画像にも、想像上のイメージにも、同じ反応を示します。


記憶を思い出すことによっても活性化することがあります。

患者が『ザ・シンプソンズ』のビデオを見ている際に発火したある細胞は、暗闇でそのシーンを思い出すたびに再度放電しました。


意識された情報は、無数の細胞に分散されると考えられています。

関連する皮質領域の全体にわたって散在する数百万のニューロンが、外界の光景の断片をコード化しているということなのです。


それらのニューロンによる同期した放電は、マクロな脳の電位を産みます。

たった一つの細胞の発火を離れた場所で検出することは不可能なようですが、意識的知覚は大規模な細胞集団を動員しますので、視覚皮質によって放出された大規模な電位の地勢(トポグラフィー)をもとに、たとえば被験者が見ている対象が顔か建物かを言い当てることもできます。


意識的な知覚表象をコード化するスパイクを見分けるには、①継時的安定性、②トライアル間での再現性、③表面的な変化を超えて内容を維持する不変性という三つの特徴を備えた、一連のスパイクを見極める必要があります。


たとえば、頭頂皮質の正中線上に位置し高度な統合を行なう領域、後帯状皮質の活動は、これらの条件を満たしています。

そこでは、視覚刺激によって引き起こされる神経活動は、目が動いても、対象そのものが動かない限り安定しています。

この領域のニューロンは、外界の対象物の位置に合わせられ、私たちがあたりを見回しても、発火の恒常性を維持することができます。


恒常的な位置を追跡する細胞を持つ後帯状回は、海馬傍回と呼ばれ、「場所細胞」を擁する、海馬に隣接する組織に密接に結びついています。


近い将来、思考の骨組みを暗号化する抽象的なコードの解読が可能になるかもしれません。

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