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執筆者の写真Hatsuo Yamada

「カイゼンの力」をタイムリーに生かして、生産性3倍増を達成!⑤

EVのインフラ関連の製品を設計・生産するEVシステム部(仮称)のお話の続きです。


「現有勢力で、生産能力を3倍」を目指すには、課題は3つ。

  1. カスタマイズ設計(開発)のリソース、400時間不足 所要:2000時間/年に対し、保有:1600時間/年=ー400時間/年

  2. 新規アウトソース生産工場の円滑な立ち上げ

  3. 生産計画のリソース、800時間不足 所要:4000時間/年に対し、保有:3200時間/年=ー800時間/年


a,b,cの課題を目の当たりにしてみると、これまで自分たちはカイゼンを勉強・実践してきたという経験と自信がありますので、「この課題なら、なんとか乗り越えられる」という感覚が湧いてきました。


 

課題bのカイゼン活動:

新規アウトソース生産工場の円滑な立ち上げ


現状の3倍の台数を生産するためには、生産ラインを新設する必要がありました。


この製品の生産はアウトソースしており、全量協力会社での生産とななります。


生産ラインの新設といっても、特に多額の設備投資を必要とするわけではないので、作業者が効率的に作業をできる作業台や簡易治具などの制作をします。


設備面では大掛かりな準備は必要としませんが、作業者の作業効率の向上や作業訓練などが主な生産準備項目になります。


前のブログ記事「「カイゼンの力」をタイムリーに生かして、生産性3倍増を達成!①」で触れた通り、プロパーメンバー間では、新たなコンフォートゾーンを共有して、ラポールが出来上がりました。


しかし、これまで付き合いのあった会社とは言え別会社ですので、少し勝手が違います。

協力会社でも減産でなく増産というニュースですので、積極的に協力したいというポジティブな気持ちは大きいはずです。


社内では部長がリードしてメンバーとビジョンを共有しましたが、同じことを工程管理担当者がやることになります。


工程管理担当者は、アウトソース先の串橋工業(仮称)に出向いて、作業長をはじめ各作業者の前で、


率直に自分たちの現状を説明し、

自分たちも一緒に活動をさせて欲しいとお願いしました。


協力会社もカイゼン活動は初めてではなく、これまでもEVシステム部(仮称)の工程管理担当者と一緒に活動をしてきましたので、事情はよく理解してくれます。


「この課題を皆で乗り切るのだ」という工程管理担当者の説明が

協力会社の個人個人の感覚に、ラポール(連帯感)を生みました。



それからやく6ヶ月のカイゼン活動が始まりました。


工程管理担当者が毎回参加して、毎月カイゼン検討会を開催しました。1日は朝礼ー昼礼ー活動成果の振り返りと、リズム感を持って進めていきます。



簡易治工具の作成、 作業動線を見える化して棚の位置や作業台の配置などのレイアウトを変更、

ビデオを分析してカイゼンしたものを作業標準書として整備するなどを、協力会社の作業者と一体になって進めていきました。


活動を始めた当初は、協力会社の作業者は受け身の状態でしたが、活動が進むにつれて、


工程管理担当者の無意識(非言語)の気持ちが乗り移り、

積極的なカイゼン提案が飛び交うようになってきました。


もし、EVシステム部の工程管理担当者が楽をして、手を抜いて、「あとは上手くやっといて」という態度を示したとしたら、協力会社の作業者には無意識(非言語)の気持ちがそのまま伝わってしまいます。


そういう時には、上部だけの活動になり、毎月カイゼン検討会をやってはいても効果は目に見えた形にはなって来ないものです。


この活動を進めるにあたって、工程管理担当者は、少し欲張ったストレッチ目標=ゴールを掲げました。


6ヶ月後の一台あたりの工数目標を25時間と設定しました。初号機の試作実績が110時間でしたので、かなり欲張った目標です。


組織のゴール達成には、具体的なコース・オブ・アクション(COA)を明確にして達成していきます。


具体的には、今回は作業プロセスを従来の20工程から50工程まで細分化し、それぞれの工程の工数を測定していきました。


そして、優先順位を明確にして、1工程ずつ順番に付加価値分析をしてカイゼン検討をして行きました。


今やっているその作業に付加価値はあるか?(ものに変化を与える作業か?)

付加価値のない作業だったら、無くせないか(N)減らせないか(H)変更できないか(K)

ー頭文字をとって、NHK分析です。


(TPSでは、あまりこの言葉は使いませんが、わかりやすいので最近は使うようにしています。)


1つの工程のコース・オブ・アクション(COA)の目指すところは、エンドステートで決まって来ます。


エンドステートとは、組織がゴールに向かう過程でチームやメンバーが役割ごとに成し遂げるべきことを達成した時の状態を言います。


今回は、このエンドステートを50項目設定したことになります。

カイゼンした作業は、作業標準書に落とし込み、作業者が毎回その通りに仕事をするようにします。


作業標準書は、現在において最も良いやり方が記載されています。

作業者が作業標準書に忠実に作業をして何か問題が起きた時には、


標準通りに作業をしたか?

ー標準通りにできなかった

(なぜ)結線作業の時に、狭いのでうまく手が届かなかった

ー手が届くようにするか、専用の工具を工夫する・・・


と、なぜなぜ分析で原因を突き止めてカイゼンします。


6ヶ月の活動の結果、目標の25時間には少し及ばなかったのですが、30時間まで追い込むことができました。

この工程には、先に説明したように作業標準書が出来上がりました。標準作業の世界です。これは宝物です。


この作業標準をベースに更なる継続的なカイゼンサイクルが回り始めるからです。


工程管理者は、もう一つの心から嬉しい宝物をもらいました。皆さん、それはなんだと思いますか?


その宝物とは、アウトソース先の協力会社からの感謝状です。


EVシステム部の生産性3倍増の話はこれで終わりです。


生産管理の事務作業のカイゼンもやりましたが、IT化の活動ですので、このブログ記事では説明を省略します。


3つの課題をそれぞれが、カイゼンの力を生かして、やり切りました。


 


カイゼンというとムダとりと連想されてしまうことが多いのですが、ムダとりはあくまでも手段です。


今回のEVシステム部のように、生産性3倍増というチャンスを捉えて、部長のリーダーシップでラポールが生まれ、コレクティブエフィカシーが高まり、今までより高いコンフォートゾーンへ全員で移行することができました。これがカイゼンです。


モチベーションとは、このようなコンフォートゾーンが移行する時に発生するエネルギーのことを言います。


この事例でもお分かりのように、部長が部下に「モチベーションを上げろ」と言わなくても、ゴールのビジョンを共有することで、モチベーションは向上します。これが正攻法です。


最後に、ゴールのビジョンは、メンバーの脳の中や組織内に内包されています。リーダーはそれを引き出して、皆と共有する事だけで良いのです。




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