EVのインフラ関連の製品を設計・生産するEVシステム部(仮称)のお話の続きです。
「現有勢力で、生産能力を3倍」を目指すには、課題は3つ。
カスタマイズ設計(開発)のリソース、400時間不足 所要:2000時間/年に対し、保有:1600時間/年=ー400時間/年
新規アウトソース生産工場の円滑な立ち上げ
生産計画のリソース、800時間不足 所要:4000時間/年に対し、保有:3200時間/年=ー800時間/年
a,b,cの課題を目の当たりにしてみると、これまで自分たちはカイゼンを勉強・実践してきたという経験と自信がありますので、「この課題なら、なんとか乗り越えられる」という感覚が湧いてきました。
課題aのカイゼン活動(後半):
「カスタマイズ設計(開発)のリソース、400時間不足」
この改善活動は、下記2項目に絞られ、関係者で共通しました。
仕様書のミスをゼロにする
「標準タイプの設計者レス」= 標準設計に関する設計者業務のITによる自働化
この活動のポイントは、ITによる自動化ではありません。自動化するまでの課題を解決しておくことです。
自動化するまでの課題とは、「1. 仕様書のミスをゼロにする」の部分です。
仕事が正しく流れていて、ITソフトに間違いがなければ、そのソフトに適応させるだけで、期待効果は得られます。
ソフトの中で受け渡しされる分には、情報は正しく伝わって正しく流れていくはずです。
しかし、「仕様書のミス」のようなヒューマンエラーに関しては、その原因をしっかりと掴み、原因を取り去ることができていなければ、うまく機械化しても現状と同じところで引っ掛かります。
つまり、インプット情報を正しくするカイゼンが必要なのです。

カイゼンは、現状調査がスタートです。
過去300件の実績を調べ、お客様の要求仕様を整理しました。
標準タイプが70%であることは、把握できましたが、70%の案件全てが、現状の図面だけで制作可能なのかを突き止めておく必要があります。
営業担当者は、一件一件お客様とやりとりしているため、日常では、「この仕様が多く出るな」程度の実感はありますが、意外とパターンとして認識してはいません。
お客様のご要望は少しずつ違っているからです。
しかし、開発・設計の視点で見ると、全て基本機能に対するバリエーションと見ることができます。
車を購入れた方なら誰でも、車の販売店で、営業マンからオプションやチョイスの希望を聞かれたご経験があるかと思います。
営業マンはお客様にご要望を聞きながら、順番に購入仕様書のチェック欄を埋めていきます。
チェック欄が全て埋まると、見積書が完成して、プリントしてお客様に確認していただき、契約という流れになります。
確定した注文仕様書のデータが、国内企画部などを経由して、VLT(Vehicle Linkage Tape)という情報が、生産開始の3日前に工場に伝達され、工場では使用による負荷の平準化など微調整をして、着工順序が決まる仕組みになっています。
営業マンの入力情報がそのまま工場の生産情報として活用されています。
EVシステム部(仮称)でも、この仕組みを参考にして、IT化を進めることになりました。
生産側で欲しい情報が整理できたので、営業サイドでもインプットすべき情報が明確になりました。
ここでは、もう一つ気をつけなければならないポイントがあります。
それは、購入仕様書の記入情報に文章を使わないことです。
文章は、人によって曖昧な表現が使われることがあるため、受け取った人が正確に理解できなくて問い合わせをしなければならないことがよくあります。
また、営業サイドとしても、文章で書いたため、それで「伝えた」という安心感を持ってしまうのです。ここの部分を残しておくと、設計から営業への問い合わせや修正の指摘は無くなりません。
ここまで来れば、あとは、単純なヒューマンエラーが残るだけです。
EVシステム部(仮称)では、営業に協力してもらって試行期間を設けることにしました。
この期間に、新たに作成した購入仕様書の内容であったり、営業のプロセスや使い勝手などを確認することにしました。
3ヶ月の試行期間を経て、特に問題点は指摘されなかったので、本格稼働に漕ぎ着けることができました。
設計の課題
仕様書のミスをゼロにする
「標準タイプの設計者レス」= 標準設計に関する設計者業務のITによる自働化
上記の課題は、確実に達成することができました。
これによって、
設計者の工数は630時間の節約となり、
目標400時間を大きく上回ることができました。
設計者本人も、確実にカイゼンの効果を感じているようです。
この記事の冒頭でもお話ししましたが、仕様書のミスをゼロにすることができたので、IT化の効果を確実にもぎ取ることができたのです。
(続く)
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