EVのインフラ関連の製品を設計・生産するEVシステム部(仮称)のお話の続きです。
製品を開発して、今年は10年目になります。
最近はテスラを始め、中国EVメーカーに引っ張られる形で、日本でもEV需要が伸びてきました。
この10年を振り返ると、スタートして3年目にまとまった需要があったのですが、その後は現在までずっと低迷状態で、不振な状態が続いていました。
しかしここに来て良いニュースが飛び込んできたのです。
これまでも継続して受注している顧客会社から大口の受注が入り、今まで我慢して続けてきたことがやっと報われるのではないかと、部長はじめ全員が胸を撫で下ろしているところです。
さあ、安心している暇はありません。
1年後に現状の3倍の生産に対応しなければならないのです。
EVシステム部長は、「現有勢力で、生産能力を3倍」というビジョンを掲げ、
あっという間に、全員で共有することができました。
ポイント2
コンフォートゾーンを移行させるくらいのストレッチなビジョンを共有して、ラポールを作り出すことが第1のポイントでした。
第2のポイントは、課題を達成する力を引き出していくことです。
EVシステム部では、早速問題をブレークダウンしてみました。すると、その課題を各個人が頭の中で咀嚼し始めます。
「現有勢力で、生産能力を3倍」を目指すには、課題は3つ。
カスタマイズ設計(開発)のリソース、400時間不足 所要:2000時間/年に対し、保有:1600時間/年=ー400時間/年
新規アウトソース生産工場の円滑な立ち上げ
生産計画のリソース、800時間不足 所要:4000時間/年に対し、保有:3200時間/年=ー800時間/年
a,b,cの課題を目の当たりにしてみると、これまで自分たちはカイゼンを勉強・実践してきたという経験と自信がありますので、「この課題なら、なんとか乗り越えられる」という感覚が湧いてきました。
この感覚をコレクティブエフィカシー
=ゴール達成に向けた自組織の能力の自己評価と言います。
また、ゴールの状況も明確に意識していますので、この課題を解決できれば、個々人がやりたかったWant toの世界が実現するという強いイメージが湧いてきます。
コレクティブ・エフィカシーが高まると、仲間の連帯感はさらにに高まります。
また、エフィカシーは伝染しますので、強いエフィカシーを持った人のそばにいると、周りの人も同じエフィカシーを感じることができます。
ここまでくると、もう生産性3倍増は手中にあると言っても過言ではありません。
途中で、色々な壁に遭遇しても、解決策を勝手に考えてゴールに辿り着きます。
以上は、コーチングの視点で説明しましたが、トヨタ式カイゼンでも同じです。
あるべき姿を設定して、全員で共有します。
現状とあるべき姿のギャップを明確にして、一つ一つ解決していくのです。
トヨタでは、組織の中に「どんなことでも必ずカイゼンできる」というエフィカシーは備わっていますので、必ず前に進んでいきます。
もし、途中で壁にぶつかった時、「困った時には知恵が出る」というのが、トヨタ式の口癖です。
「困ったときの知恵」というのは、認知科学コーチングでいうところの「RAS(網様体賦活系)が外れる」という現象です。
人の脳は普段は関係ないものはシャットアウトする仕組みになっています。
それがRASの働きです。脳のフィルターと捉えてもらって良いでしょう。
真剣にゴールを目指す時には、今までシャットアウトしていたゴールに関係する情報を、RASが外れて脳に流し込んできます。
この脳の働きがあるので、大抵の課題は解決策が見つかるのです。
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